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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

23-31 組織・細胞にみられる変化に関する記述である。正しいのはどれか。

(1)授乳期にみられる乳腺の肥大を仮性肥大という。
(2)高血圧症にみられる左心室肥大を作業肥大(労作性肥大)という。
(3)神経細胞は、再生能力の強い細胞である。
(4)食道粘膜では、扁平上皮化生がみられる。
(5)一次性治癒に分類される創傷治癒は、大きな瘢痕組織を残す。

 以前のカリキュラムでは、病理学で出題されていた問題だ。この分野としては、炎症、萎縮、化生、変性、肥大、創傷治癒、壊死、虚血、梗塞などが、よく出題される用語なので、一度教科書で整理しておこう。

(1)× 妊娠・授乳期に女性の乳腺が肥大するのは、エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチンなどのホルモン作用によるもので、このような肥大を内分泌性肥大という。病的なものではないので生理的肥大ともいう。仮性肥大とは、実質細胞は萎縮しているのに、その間を埋める結合組織や脂肪組織が増加して、一見肥大しているように見える状態をいう。進行性筋ジストロフィーでは、横紋筋の萎縮を脂肪組織が補填するため、筋肉が肥大しているように見える。

(2)○ 作業肥大(労作性肥大)とは、組織が何か作業をしようとしたときに、負担がかかって、それを克服するために組織が大きくなることをいう。代表例は、腕立て伏せをして腕の筋肉に負荷を与えると、腕の骨格筋が太くなることである。高血圧では、大動脈圧に打ち勝って左心室から血液を送り出さなければならなので、左心室の心筋が肥大する。

(3)× 細胞の再生能力については、以下の3つに分類される。
①不安定細胞(分裂細胞)
 個体が生存している限り、分裂を繰り返す細胞。皮膚、外分泌腺、消化管上皮、骨髄造血細胞など。
②安定細胞
 正常な状態ではG0期に留まり、分裂しない。刺激が加わるとG1期に移行し、分裂する。肝臓、膵臓、腎臓、線維芽細胞、平滑筋、血管内皮細胞など
③非分裂細胞(永久細胞)
 生直後から細胞分裂が起こらない細胞。心筋細胞、骨格筋細胞、神経細胞など

(4)× 化生とは、分化した細胞が、形態的にも機能的にも、本来別の場所にあるべき性質を持つようになることをいう。例えば、子宮頚部の円柱上皮や気管の多列線毛上皮が扁平上皮に置き換わる扁平上皮化生、胃の上皮が小腸の上皮に置き換わる腸上皮化生などがある。食道はもともと重層扁平上皮なので、扁平上皮化生は起きない。

(5)× 組織が傷つけられたり、欠損したりして、それが治っていく過程を創傷治癒という。組織に障害が起きると、まず、血管透過性が亢進し、血漿蛋白や白血球が集まり急性炎症が起こる。続いて欠損した組織を埋めるための肉芽組織が増生し、最後に肉芽組織が線維組織に置き換わって瘢痕になる。問題文では「一次性治癒」という用語が使われているが、病理学の教科書をいくつかみると、一致して「一次治癒」、「二次治癒」という用語がつかわれているので、ここでは「性」を除いて覚えておこう。さて、一次治癒は、創傷が鋭い刃物で傷つけられたときの治癒で、肉芽組織が少なく、ほとんど瘢痕を残さない。一方、二次治癒は、組織の欠損が大きいときの治癒で、多量の肉芽組織の形成を必要とし、瘢痕を残す。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2009-07-27 20:12 | 第23回国家試験 | Comments(0)