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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

23-37 脂質異常症(高脂血症)に関する記述である。正しいのはどれか。

(1)高LDL-コレステロール血症では、血清は白濁する。
(2)高トリグリセリド血症では、血液凝固能は低下する。
(3)高LDL-コレステロール血症では、急性膵炎をきたしやすい。
(4)低HDL-コレステロール血症では、動脈硬化のリスクが軽減される。
(5)高LDL-コレステロール血症では、黄色腫がみられる。

 リポタンパク質の基本を押さえておこう。
 キロミクロンは、食事に含まれるトリグリセリドを小腸から全身に運ぶ。血管外に出ることはなく、最後は肝臓に取り込まれる。
 VLDLは、肝臓で合成されたトリグリセリドを全身に運ぶ。血管外に出ることはなく、最後は肝臓に帰ってくる。しかし、肝細胞には取り込まれずに、洞様毛細血管(類洞)でLDLになる。
 LDLは、肝臓で合成されたコレステロールを全身に運ぶ。血管外に出て、LDL受容体に結合して細胞内に取り込まれる。
 HDLは、全身の余分なコレステロールと集めて肝臓に運ぶ。逆転送系と呼ばれる。

(1)× 血清が白濁するのは、多量のトリグリセリドを含有する大きな粒子であるキロミクロンが増加する場合である。LDLが増加しても血清は白濁しない。

(2)× 脂質異常症は、動脈硬化症の重要な危険因子であるので、直接的あるいは間接的に血栓形成促進に関与していることは想像できる。血管内皮細胞が産生するプロスタサイクリン(PGI2)や一酸化窒素(NO)には抗血栓作用があり、脂質異常症は、これらの作用を直接障害することが知られている。山本章編集「トリグリセリド、HDLと動脈硬化」(フジメディカル出版、2001年)によれば、高トリグリセリド血症では、フィブリノーゲンやビタミンK依存性凝固因子の産生増加により、血液凝固能は亢進しているそうだ。

(3)× 急性膵炎を合併する脂質異常症は、高キロミクロン血症である。膵周辺でキロミクロンに含まれるトリグリセリドがリポタンパク質リパーゼにより分解され、多量に放出された遊離脂肪酸が腺房細胞障害や循環障害を起こすと考えられている。

(4)× HDLは、体内の余分なコレステロールを集めて回って、肝臓に運んでくれる善玉コレステロールである。低HDL-コレステロール血症ということは、HDLが不足しているということで、動脈内膜の泡沫細胞に取り込まれたコレステロールの回収が滞り、動脈硬化のリスクが増加する。

(5)○ 黄色腫には結節性黄色腫と発疹性黄色腫の2種類がある。結節性黄色腫は、コレステロールを取り込んだマクロファージ(泡沫細胞)が、皮膚や皮下組織に集まって塊になったもので、眼瞼、肘や膝の関節の伸側、アキレス健などに多くみられる。主にLDLが増加する家族性高コレステロール血症(Ⅱa型)で出現する。発疹性黄色腫は、キロミクロンが組織に蓄積したもので、臀部から腰背部に直径2~3mmのオレンジ色から淡赤色の丘状発疹が出現する。主にキロミクロンが増加するⅠ型またはⅤ型高脂血症で出現する。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2009-08-05 13:12 | 第23回国家試験 | Comments(0)