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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

23-45 脳血管障害に関する記述である。正しいのはどれか。

(1)クモ膜下出血では、髄膜刺激症状が認められない。
(2)一過性脳虚血発作は、脳局所症状が48時間持続する。
(3)脳出血の前には、一過性脳虚血発作の反復を認める。
(4)脳塞栓の成因には、心臓内の血栓剥離がある。
(5)ラクナ梗塞(穿通枝梗塞)は、脳動脈瘤破裂の結果として出現する。

(1)× 脳血管障害の症状を考えるときは、脳の解剖生理学的な特徴を理解しておく必要がある。まず、脳の機能局在について。脳の特徴として、部位により細かく機能が分化していることがある。そのため、障害が起こった部位により、出現する症状が異なる。逆に、症状を詳しく調べれば、脳のどの部位の障害かがわかるということだ。もうひとつの特徴は、脳は頭蓋骨という硬い部屋の中に閉じ込められているということだ。脳血管障害では、大なり小なり脳の組織が障害され浮腫(脳浮腫)が起こる。脳浮腫を、平たくいえば脳が水膨れになるということだ。しかし、頭蓋骨で覆われている部分は広がらないので、結局延髄のところから頭蓋骨の外に出ようとする。だけど出口がせまいので詰まってしまう。このため延髄の機能が停止してしまう。延髄には呼吸や心臓の中枢があるので、呼吸や心臓が停止する。
 さて、クモ膜下出血だが、クモ膜下腔に出血が起きるので、脳の特定の部位を障害するわけではない。よって、脳の局所症状(例えば右半身まひまど)は起きない。脳と脊髄を包んでいる結合組織の膜を「髄膜」という。髄膜は表層から「硬膜」、「クモ膜」、「軟膜」の3層構造でできている。クモ膜下出血は、クモ膜と軟膜の間の隙間に出血が起きるものである。よって、クモ膜下出血では髄膜刺激症状(項部硬直、頭痛、嘔吐など)が出現する。

(2)× 「一過性」とは、ある症状が短い間起こり、また消える性質を表す用語である。短い時間とは24時間未満のことである。よって、一過性脳虚血発作とは、脳局所症状が24時間以内に消失するものをいう。

(3)× 一過性脳虚血発作とは、脳血管が何らかの原因で閉塞し、その先に血液が十分に供給されなくなったために症状が起きる。一過性脳虚血発作が反復するということは、今にもつまりそうな血管があるということだ。よって、続いて起きる確率が高いのは、脳出血ではなく脳梗塞だ。

(4)○ 脳血管障害は、大きく「脳出血」、「脳梗塞」、「クモ膜下出血」の3つに分類される。脳梗塞は「脳血栓」と「脳塞栓」に分類される。脳血栓とは、動脈硬化症など脳動脈の病変があるところに血栓ができて血管が詰まるものをいう。脳塞栓とは、脳血管とは別な場所でできた血栓が、血流によって流れてきて脳血管に詰まるものをいう。脳塞栓の原因になる血栓ができる場所として、心臓内や頚動脈が多い。

(5)× 穿通枝とは、脳の表層を走行する動脈から垂直に分枝して、脳の深部に血液を送る細い動脈のことである。この穿通枝が閉塞して直径1.5cm未満の小さな梗塞巣が出現するものをラクナ梗塞という。ラクナ(lacuna)とは湖(lake)と同じ意味で、小さな梗塞巣が空砲化して内部に液体をためた状態が湖のように見えることからこのような名前がついた。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2009-08-26 14:25 | 第23回国家試験 | Comments(0)