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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

22-42 神経・筋疾患とその原因となる障害部位についての組合せである。正しいのはどれか。

(1)重症筋無力症 - 自律神経
(2)筋萎縮性側索硬化症 - 感覚路
(3)パーキンソン病 - 錐体外路
(4)多発性硬化症 - 骨格筋
(5)周期性四肢麻痺 - 錐体路

(1)× 運動神経と骨格筋の間のシナプスでは、アセチルコリンが神経伝達物質になっている。運動神経の末端からアセチルコリンが放出され、骨格筋のアセチルコリン受容体に結合して筋肉が収縮する。重症筋無力症では、アセチルコリン受容体に対する自己抗体が産生されるために、運動神経から骨格筋への刺激伝達が障害され、骨格筋が疲れやすく、脱力する疾患である。

(2)× 神経系には、中枢神経と末梢神経がある。末梢神経には、体性神経と自律神経がある。体性神経には感覚神経と運動神経がある。感覚路とは、感覚神経が通っている神経経路のことである。筋萎縮性側索硬化症は、運動神経の変性により全身の骨格筋が萎縮する疾患である。

(3)○ パーキンソン病は、中脳黒質にあるドパミン神経細胞が変性、消失するために、緩慢な動作、関節のこわばり、姿勢保持障害などが出現する疾患である。その他、手の震えなど錐体外路が障害された症状が出現する。

 錐体外路を説明するには少し時間がかかるので、根気よく付き合ってほしい。まず、随意運動と不随意運動を理解しよう。随意運動とは、意のままに体を動かすこと。例えば、「目の前にあるコップの水を飲もう」と考えた時、その意思に従って手を動かし、コップをつかみ、コップを口に運び、中の水を口の中に流し込む。このような動作をするための、大脳皮質運動から筋肉に至る神経路を「錐体路」という。そしてこのような神経経路以外の神経経路を「錐体外路」という。錐体路を形成するニューロンは、大脳運動野の神経細胞体から発し、脊髄全角に至る軸索と脊髄全角の神経細胞体から発し、骨格筋に至る軸索の、たった2つのニューロンで構成され、余計な刺激は入ってこない。これに対し、錐体外路を構成する神経経路は多くのニューロンで構成され、複雑な調節を受ける。このようなシナプスは主に大脳基底核に存在する。「錐体外路」が障害されると、例えば「手が振るえる」など、意思とは関係のない動きが出現する。このような運動を不随意運動という。

 「もう理屈の理解はあきらめた」という人は、「錐体路の障害」=「随意運動の障害」、「錐体外路の障害」=「不随意運動」だけを覚えておこう。

 なぜ、パーキンソン病で錐体外路症状が出現するかというと、中脳黒質のドパミン神経細胞は大脳基底核に信号を送っており、これが変性・消失すると大脳基底核の機能障害が出現し、そのために錐体外路が障害され、その結果、不随意運動が出現するということだ。

(4)× 多発性硬化症とは、中枢神経に多発性に脱髄病変が出現し、筋力低下、感覚障害、排尿障害などあらゆる神経障害が出現する疾患である。骨格筋は原因ではない。

(5)× 周期性四肢麻痺とは、何らかの原因で、発作性に随意筋の麻痺が出現し、それが繰り返す状態をいう。原因としてもっとも多いのは、甲状腺機能亢進症に伴う低K血症である。錐体路など神経系自体の障害が原因ではない。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2009-10-01 16:51 | 第22回国家試験 | Comments(0)