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臨床栄養学

24-147 消化器系手術前後の栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)転移のない食道癌の手術では、回腸瘻を造設する。
(2)ダンピング症候群は、胆嚢摘出術後に起こる。
(3)後期ダンピング症候群では、生理的食塩水を補給する。
(4)胃全摘術後の貧血の原因は、ビタミンB1欠乏症である。
(5)嚥下障害は、食道癌術後の合併症である。

(1)× 食道癌の術後は、狭窄などにより嚥下障害を起こす可能性がある。そのため、術後の栄養障害を予防するために経腸栄養を行うルートを確保しておく場合がある。選択するルートとしては、経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy; PEG)が第1選択となり、あえて回腸瘻にする理由はない。進行癌の場合は、術後に放射線療法を行う場合があるので、嚥下障害が出現する頻度が高く、PEGを造設しておくことは有用であると考えるが、転移のない食道癌であれば、必ずしもPEGは必要ない。

(2)× ダンピング(dumping)には、「投げ捨てること、投棄、 放下、投げ売り、安値輸出、不当廉売」などの意味がある。ダンピング症候群とは、胃切除術後に食べたものが一度に小腸に落下してくるために起こる症状である。胆嚢摘出後に起こる合併症は、脂肪の消化吸収障害である。

(3)× ダンピング症候群には、早期ダンピング症候群と後期ダンピング症候群がある。早期ダンピング症候群は、食物が空腸に一度に大量に流入することにより、高浸透圧刺激と急激な拡張刺激で神経内分泌反応を引き起こすものである。食後10~30分後に腹部症状(腹痛、悪心、嘔吐、腹鳴、下痢など)と全身症状(動悸、発汗、冷や汗、めまい、呼吸困難、失神など)が出現する。晩期(後期)ダンピング症候群は、糖質の急速な吸収により高血糖(1時間以内)が出現し、その反応としてインスリンの過剰分泌が起こり、食後90分~3時間後に、反応性の低血糖症状(脱力感、めまい、冷や汗、動悸、手の震え、意識障害など)が出現する。

(4)× 胃全摘後の貧血は、胃酸不足による鉄の吸収障害が原因で起こる鉄欠乏性貧血と、胃腺の壁細胞から分泌される内因子不足によるビタミンB12欠乏が原因で起こる巨赤芽球性貧血である。ビタミンB12は、肝臓に数年分貯蔵されているので、ビタミンB12欠乏は、胃切後数年して出現する。

(5)〇 食道癌の術後は、切除部位の狭窄などにより嚥下障害が起こる。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2011-03-18 11:23 | 第24回国家試験 | Comments(0)