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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

25-25 代謝とその調節に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)インスリンは、解糖を抑制する。
(2)アクアポリンは、細胞膜における水の通過に関与する。
(3)Na+,K+-ATPaseは、ナトリウムイオン(Na+)を細胞内に能動輸送する。
(4)アルドステロンは、アンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠに変換する。
(5)脱共役たんぱく質(UCP)は、クレアチニンリン酸の分解とATP産生を脱共役させる。

(1)× 解糖の律速段階は、フルクトース-6-リン酸からフルクトース-1,6-二リン酸ができる段階で、ホスホフルクトキナーゼによって触媒される。ホスホフルクトキナーゼの活性は、フルクトース-2,6-二リン酸によってアロステリック調節を受け、活性化される。インスリンは、肝細胞内のフルクトース-2,6-二リン酸濃度を上昇させるので、解糖は促進される。しかし、インスリンは、骨格筋細胞内のフルクトース-2,6-二リン酸濃度を低下させるので、解糖は抑制される。

(2)〇 「アクア(aqua)」は、水のことである。「ポリン」は、「ポア(pore)」に由来し、穴という意味である。つまり、アクアポリンは、水が通る穴という意味である。アクアポリンは、腎臓の集合管の上皮細胞に存在するタンパク質である。腎臓の集合管では、集合間の内腔に比べて集合間周囲の間質の浸透圧が高いために水が再吸収され、尿が濃縮される。水は細胞膜を自由に通過することができるが、移動の効率はあまりよくない。そこで、集合管のように大量の水が通過する細胞には、水の通り道になるタンパク質(アクアポリン)が存在する。集合管上皮が、下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(バソプレシン)に刺激されると、細胞内にあったアクアポリンが細胞膜に移動して、水の吸収速度を上げる。この過程にはATPは必要ない。

(3)× Na+,K+-ATPaseは、Na+を細胞外に、K+を細胞内に能動輸送する。つまり、ATPを消費して、濃度勾配に逆らった輸送を行う。

(4)× アンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠに変換するのは、傍糸球体装置から分泌されるレニンである。アルドステロンは、腎臓の皮質集合管に働いて、Na+の再吸収とK+の排泄を促進する。

(5)× ミトコンドリアにおいて、電子伝達系で電子が移動する間に、マトリックスの水素イオン(H+)が内膜と外膜に挟まれた空間にくみ出される。このH+が、ATP合成酵素を通ってマトリックスに流れ込んでくるときに放出されるエネルギーによってATPが合成される。脱共役タンパク質(UCP、uncoupling protein)は、内膜と外膜の間にあるH+を、ATP合成酵素を通さずに、マトリックスに戻す。この時に放出されるエネルギーは熱に変換される。脱共役とは、H+の移動とATP合成がカップリングしないようにするという意味である。UCPは、褐色脂肪細胞に多く存在し、体温調節に関わっている。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2011-03-30 13:16 | 第25回国家試験 | Comments(0)