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臨床栄養学

19-23.60歳男性、事務職、身長:165cm、体重:50kg、倦怠感のため外来を受診した。血中尿素窒素(BUN):30mg/dL、クレアチニン:1.5mg/dL、クレアチニンクリアランス(Ccr):40mL/min、血圧:160/98mmHg、であった。目標とするエネルギー算出法として、正しいのはどれか。
(1)現体重kg当たり、20~25kcalとする。
(2)現体重kg当たり、30~35kcalとする。
(3)標準体重kg当たり、20~25kcalとする。
(4)標準体重kg当たり、30~35kcalとする。
(5)ハリス・ベネディクトの式を用いて算出する。

24.問23の事例について、適切な栄養管理はどれか。
(1)1日のタンパク質90g、食塩5~7gとする。
(2)1日のタンパク質70g、食塩8~10gとする。
(3)1日のタンパク質70g、食塩5~7gとする。
(4)1日のタンパク質40g、食塩8~10gとする。
(5)1日のタンパク質40g、食塩5~7gとする。

まずBMIと標準体重を計算しておこう。BMIは18.4、標準体重は60kgだ。やせているぞ。標準体重に10kgも足りないぞ。自覚症状は倦怠感だけだから、まだ、診断名は浮かばない。でも、栄養障害を起こすような疾患の可能性があることを頭に入れておこう。示された検査結果はBUN、クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血圧だ。この組み合わせを見ただけで「腎臓病だな」と当たりをつけよう。BUN、クレアチニン、クレアチニンクリアランスを合わせて腎機能検査という。基準値は教科書によって若干違うので正確に細かい数字を覚える必要はない。大雑把にBUNは20以下、クレアチニンは1以下、クレアチニンクリアランスは100前後と覚えておこう。
それでは、この人のアセスメントをやってみよう。BUNとクレアチニン軽度上昇している。尿素もクレアチニンを体にとっては老廃物だ。老廃物の血中濃度が増加することは、老廃物の産生が増加したか、排泄が低下したかのいずれかだ。クレアチニンクリアランスが正常の半分以下に低下しているぞ。クレアチニンクリアランスは糸球体濾過値(GFR)を表すので、腎臓の排泄機能が低下していると考えよう。すなわち腎不全だ。
血圧はどうだろうか、血圧は腎不全ではしばしば上昇するので、不自然なところは何もないぞ。
腎不全とすると、何が原因だろうか?この事例ではこれ以上の情報がないのでなんともいえない。診断のためには尿検査(血尿・タンパク尿)、血液検査(血清タンパク、アルブミン)、腎生検などの検査必要だが、この問題を解くにはそこまでの情報は必要ない。
腎不全の栄養管理の方針を立てるには、腎不全の病期を決めることが重要だ。腎不全の病期は第1期(腎予備力低下、GFR50%以上)、第2期(代償性腎不全、GFR30~50%)、第3期(非代償性腎不全、GFR10~30%)、第4期(尿毒症、GFR10%以下)に分けられる。この人は、たぶん、第2期の代償性腎不全に入るだろう。
保存期慢性腎不全の食事療法の原則は、高エネルギー・低タンパク・減塩食だ。具体的にどの程度にするかについて、日本腎臓病学会の「腎疾患の生活指導・食事指導ガイドライン(1998年)」を紐解いてみよう。まず、エネルギー量は「35kcal/kg/dayが基準。ただし、年齢や運動量によって、適正なエネルギー量は28~40の範囲になりうる」と書いてある。この人は事務職なので40にする必要ななさそうだ。でも、やせているので28では少なすぎる。ということで選択肢の中では30~35が適当だろう。おっと、ガイドラインの数字は標準体重当たりで示されていることを忘れないように!
タンパク質については「低タンパク食はタンパク0.6g/kg/dayとし、0.6g/kg/day以上、0.7g/kg/day未満であれば目標達成とする」と書いてある。標準体重60kg×0.6=36、60×0.7=42だ。選択肢の中では40gが適当だろう。
食塩については「7g/day以下とする。難知性高血圧例、浮腫合併例ではさらに少ない4~5g/day以下を目標とする」と書いてある。いずれにしても8g以上は不可ということだ。
よって、正解は問23が(4)、問24が(5)だ。
ハリス・ベネディクトの式は基礎代謝量を計算する式だが、この事例では用いる必要はない。
by kanri-kokushi | 2005-10-26 13:26 | 第19回国家試験 | Comments(0)