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臨床栄養学

25-138 成人ネフローゼ症候群に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)糸球体毛細血管のたんぱく質透過性は、亢進している。
(2)血漿膠質浸透圧は、上昇している。
(3)浮腫に対しては、水分摂取量を80㎖/㎏標準体重/日にする。
(4)たんぱく質摂取量は、1.5ℊ/㎏標準体重/日にする
(5)エネルギー摂取量は、20~25㎉/㎏標準体重/日にする。

(1)〇 糸球体での濾過は、毛細血管とそれを包む足細胞の間にある基底膜の小さな穴を通して行われる。正常な糸球体では、β2‐ミクログロブリンのような分子量の小さいたんぱく質を除いて、ほとんど濾過されることはない。糸球体毛細血管のたんぱく質透過性の亢進とは、その基底膜の穴が大きくなり、アルブミンなどのたんぱく質が漏れ出てくることをいう。そのため、ネフローゼ症候群では、大量のたんぱく尿が出現する。

(2)× 「膠質」とは、コロイドのことである。コロイド(colloid)の語源は、ギリシャ語のkollaで、膠(にかわ)のことである。膠は、動物の皮、骨などを煮た液を乾かしたもので、ゼラチンを多く含んでいる。ゼラチンとは、コラーゲンを含むたんぱく質である。血漿膠質浸透圧とは、血漿たんぱく質濃度が間質液のたんぱく質濃度より高いことから、間質から血管内へ水を吸い上げる圧力は発生することをいう。ネフローゼ症候群では、大量の血漿たんぱく質が尿中に失われるために、低たんぱく血症が出現する。その結果、血漿膠質浸透圧は、低下する。

(3)× ネフローゼ症候群の浮腫に対しては、塩分制限を行う。ガイドラインでは、治療反応性良好な微小変化型ネフローゼ症候群で0~7ℊ/日、微小変化型ネフローゼ症候群以外で5ℊ/日となっている。高度の難治性浮腫がある場合は水分制限が必要であるが、80㎖/㎏標準体重/日だと、50㎏の人では4ℓ/日となり、全然水分制限したことにならない。

(4)× 従来、ネフローゼ症候群に高たんぱく食が処方されていたが、必要以上の高たんぱく食は腎機能を悪化させる可能性があり、また低たんぱく血症を改善する効果も認められないことから、現在では「日本人の食事摂取基準」を目標とするか、あるいは軽度たんぱく質制限(0.8ℊ/㎏/日)とすることが推奨されている。

(5)× たんぱく質制限を行う場合、体内のたんぱく質利用効率を上げるために、高エネルギー食とする。腎臓病の高エネルギー食は、35㎉/㎏標準体重/日が基本である。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2011-12-21 12:21 | 第25回国家試験 | Comments(0)