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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

25(追加)-34 メタボリックシンドロームで血中濃度が低下する物質である。正しいのはどれか。
(1)レジスチン
(2)腫瘍壊死因子(TNF-α)
(3)インスリン
(4)アディポネクチン
(5)プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1)

 メタボリックシンドロームは、高血糖、脂質異常症、血圧高値など複数の動脈硬化症危険因子が重積し、心血管病を発症するリスクが高い状態の診断名である。危険因子が重積する背景には、インスリン抵抗性がある。インスリン抵抗性が出現する背景には、肥満(特に内臓脂肪の過剰蓄積)がある。近年、脂肪組織は単にエネルギーを中性脂肪として貯蔵しているだけでなく、さまざまな生理活性物質を分泌している内分泌組織であることが明らかにされてきた。脂肪細胞(adipocyts)から分泌されるサイトカイン(cytokines)を総称して、アディポサイトカイン(adipocytokines)と呼ぶ。

(1)× レジスチンの血中濃度は、上昇する。
 レジスチンは、肥大した脂肪組織に侵入したマクロファージから分泌されるたんぱく質である。レジスチンは、脂肪細胞、肝細胞、骨格筋細胞に作用してインスリン抵抗性を引き起こす。インスリンに対する抵抗性(resistance to insulin)から、レジスチン(resistin)と命名された。

(2)× 腫瘍壊死因子(TNF-α)の血中濃度は、上昇する。
 TNF-α(tumor necrosis factor-α)は、マクロファージなど免疫担当細胞から分泌される炎症性サイトカイン(たんぱく質)であるが、肥大した脂肪細胞からも分泌される。TNF-αは、インスリンの細胞内情報伝達経路を遮断して、インスリン抵抗性を引き起こす。

(3)× インスリンの血中濃度は、上昇する。
 インスリンは、膵ランゲルハンス島β細胞から分泌されるペプチドホルモンである。インスリン抵抗性が存在するため、一定のインスリン作用を起こすためには、より多くのインスリンを分泌する必要がある。その結果、血中インスリン濃度は上昇する。

(4)〇 アディポサイトカインの血中濃度は、低下する。
 アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるたんぱく質である。動脈硬化抑制作用やインスリン抵抗性改善作用がある善玉アディポサイトカインである。脂肪細胞が肥大すると、アディポネクチンの分泌が減少するので、血中濃度は低下する。

(5)× プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1)の血中濃度は、上昇する。
 PAI-1(plasminogen activator inhibitor-1)は、肝臓と脂肪細胞から分泌されるたんぱく質である。PAI-1は、血栓を溶解するプラスミンの生成を抑制するので、血栓ができやすくなる。肥満になると、脂肪細胞でのPAI-1合成量が増加するので、血中濃度が上昇する。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2012-09-25 12:15 | 第25回国家試験(追加) | Comments(0)