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臨床栄養学

25(追加)-135 クワシオルコル(kwashiorkor)に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。

a たんぱく質の摂取量は、不足している。
b
 浮腫をともなう。
c
 創傷の治癒は、促進する。
d
 褥瘡の発症率は、低下する。
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a○ たんぱく質あるいはエネルギーの摂取不足により、体重減少、成長障害、消耗がもたらされることをたんぱく質エネルギー欠乏症(PEM, protein energy malnutrition)という。摂食量の減少以外にも、消化吸収障害、他の病気や外科手術による栄養必要量の増加などによって引き起こされる。主としてたんぱく質不足によるものをクワシオルコル(kwashiorkor)といい、主としてエネルギー不足によるものをマラスムス(marasmus)、両方混合したものをマラスミック・クワシオルコル(marasmic-kwashiorkor)という。クワシオルコルとは「第2子出生後に第1子が罹患する病気」(アフリカの民話)という意味である。貴重なたんぱく源である母乳を第2子が独占するため、第1子が摂取するたんぱく質が欠乏する。

b○ クワシオルコルでは、たんぱく質不足に対して糖質の摂取が比較的保たれているので、インスリンが分泌され、副腎皮質ホルモンの分泌は低下している。そのため、皮下脂肪や筋肉たんぱく質の分解が抑制されるので、肝臓でたんぱく質を合成するためのアミノ酸が不足する。その結果、肝臓でのアルブミン合成が減少し、低アルブミン血症が出現する。低アルブミン血症では、血液の膠質浸透圧が低下するので、間質液を毛細血管に吸い上げることができなくなる。その結果、間質液が貯留して浮腫が出現する。

c× 創傷の治癒とは、傷つけられたり、欠損したりした組織が治っていく過程である。創傷の治癒は、組織の障害→炎症→異物や変性した組織の除去→肉芽組織→線維化→瘢痕の過程をたどる。組織に障害が起きると、まず、血管透過性が亢進し、血漿蛋白や白血球が集まり急性炎症が起こる。続いて欠損した組織を埋めるための肉芽組織が増生し、最後に肉芽組織が線維に置き換わって瘢痕になる。この過程では、新たなたんぱく質の合成が不可欠である。たんぱく質が欠乏するクワシオルコルでは、創傷の治癒は、遅延する。

d× 褥瘡とは、身体に加わった外圧により、皮膚および皮下組織に損傷が生じた状態をいう。圧迫を受けた組織に血行障害が生じ、その結果組織が虚血状態になって組織の壊死が起こる。褥瘡の発症には、内的要因と外的要因が関わっている。内的要因には、栄養状態、循環不全、貧血など全身状態の悪化や加齢がある。外的要因には、圧迫、皮膚湿潤(多汗、尿失禁、便失禁)、摩擦、ずれ、不潔など、局所に作用する要因がある。クワシオルコルは、褥瘡の発症率を上昇させる内的要因(栄養状態)である。

正解(1


by kanri-kokushi | 2014-12-12 14:02 | 第25回国家試験(追加) | Comments(0)