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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

28-36 先天性代謝異常症に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)糖原病I型では、グルコースが過剰に産生される。
(2)フェニルケトン尿症では、精神発達障害がみられる。
(3)メープルシロップ尿症は、芳香族アミノ酸の代謝異常症である。
(4)ガラクトース血症は、原発性高脂血症である。
(5)ウィルソン病は、亜鉛の代謝障害である。

(1)× 糖原病I型では、グルコース産生が減少して、低血糖を起こす。
 糖原病Ⅰ型は、von Gierke病ともいう。原因は、グルコース6-ホスファターゼの欠損である。グルコース6-ホスファターゼが、グルコース6-リン酸からグルコースを産生する酵素である。よって、グルコース産生が減少して低血糖を起こす。主な症状は、肝臓と腎臓にグリコーゲンが蓄積、低血糖、高乳酸血症である。治療は、低血糖予防のため、高糖質の頻回食とする。ガラクトース(乳糖に含まれる)、フルクトース(ショ糖に含まれる)は、グルコースとして利用できず、乳酸産生を増加させるので、控える。

(2)〇 フェニルケトン尿症では、精神発達障害がみられる。
 フェニルケトン尿症は、フェニルアラニン水酸化酵素の欠損が原因である。フェニルアラニン水酸化酵素は、フェニルアラニンからチロシンを生成する酵素である。常染色体劣性遺伝する。チロシンが不足すると、甲状腺ホルモンも不足し、身体発育障害が出現する。また、メラニン不足にもなり、赤毛,白皮症が出現する。さらに、L-ドーパ,エピネフリンも不足し、精神発達障害が出現する。フェニルアラニンの蓄積は、フェニールピルビン酸、フェニル酢酸の尿中排泄を増加させ、カビ様尿臭が出現する。食事療法としては、診断後直ちに、無フェニルアラニンミルクまたは低フェニルアラニン治療乳を開始する。血中フェニルアラニン濃度を2~4㎎/㎗程度に維持する。離乳開始後は、治療乳を中心にした低たんぱく食とする。1日のエネルギーは、健常児と同等にする。たんぱく質は所要量を確保するが、大部分は治療乳から摂取する。フェニルアラニンは必須アミノ酸なので完全除去しない。発育に必要なフェニルアラニン最低量は15~30㎎/㎏/日である。低タンパク食であるが、たんぱく質の不足分は、フェニルアラニンを除いた治療乳や、アミノ酸粉末で補い、血中フェニルアラニン濃度を適正に保つように投与する。

(3)× メープルシロップ尿症は、分岐鎖アミノ酸の代謝異常症である。
 メープルシロップ尿症は、分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体の欠損が原因である。分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体は、ケト酸からアシルCoAを産生する。常染色体劣性遺伝する。ケト酸の尿中排泄が増加するので、尿は楓(メープル)シロップ臭がする。生後1~2週から哺乳困難、痙攣、後弓反張、神経障害、低血糖、ケトアシドーシスなどが出現する。治療は、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)制限食である。

(4)× ガラクトース血症は、ガラクトースの先天代謝異常症である。
 ガラクトース血症は、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼの欠損が原因である。ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼは、ガラクトース-1-リン酸とUDP-グルコースから、UDP-ガラクトースとグルコース1-リン酸を生成する。常染色体劣性遺伝する。ガラクトースとガラクトース1-リン酸の血中、尿中濃度が上昇し、嘔吐、下痢、黄疸、肝硬変、白内障、知能障害などの症状が出現する。治療は、乳糖除去食である。

(5)× ウィルソン病は、銅の代謝障害である。
 ウィルソン病は、細胞内銅輸送たんぱく質の異常により、組織に銅が沈着する疾患である。肝硬変、錐体外路症状、角膜のカイザー‐フライシャー輪が3大症状である。セルロプラスミン(銅輸送たんぱく質)の合成障害により、血中セルロプラスミン値は低値になる。治療には、銅キレート薬を使用する。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2015-01-22 17:50 | 第28回国家試験 | Comments(0)