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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

28-48 免疫に関する記述である。正しいのはとどれか。1つ選べ。
(1)Bリンパ球は、胸腺で成熟する。
(2)抗体は、抗原の特定部位を認識する。
(3)Tリンパ球は、抗体を産生する。
(4)赤血球は、抗原提示を行う。
(5)IgMは、分泌型の免疫グロプリンである。

(1)× Tリンパ球(=T細胞)は、胸腺で成熟する。Bリンパ球(=B細胞)、骨髄で成熟する。
 T細胞は、骨髄で増殖し、胸腺へ移動して成熟するリンパ球である。細胞表面にT細胞受容体を持つ。T細胞受容体は、抗原提示細胞のMHCクラスⅡと結合して外来抗原を認識する。ヘルパーT細胞は、種々のサイトカインを分泌して、B細胞の増殖と抗体産生細胞への分化を促進する。サプレッサーT細胞は、免疫応答を抑制する。メモリーT細胞は、二次免疫応答に備える。細胞傷害性T細胞は、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を攻撃する。

(2)〇 抗体は、抗原の特定部位を認識する。

(3)× Bリンパ球は、抗体を産生する。
 B細胞は、細胞表面に免疫グロブリン(IgD)(抗原受容体)を持つ。抗原が結合すると、T細胞の助けを借りて増殖し、抗体産生細胞(形質細胞)に分化する。

(4)× マクロファージや樹状細胞は、抗原提示を行う。
 抗原提示細胞には、樹状細胞、マクロファージなどがある。外来抗原の断片は、MHC(major histocompatibility complex、主要組織適合遺伝子複合体)クラスⅡに結合して細胞表面でT細胞に提示する。MHCクラスⅠは、細胞内で合成された抗原ペプチドを提示する。ヒト白血球型抗原(human leukocyte antigen, HLA)は、白血球に発現する抗原のことであるが、現在では白血球だけに発現しているのではなく、MHCとして、ほとんど全ての細胞表面に発現していることがわかっている。
 体内に異物が侵入すると、まず樹状細胞やマクロファージが異物を貪食する。これは、生まれつき獲得している自然免疫である。異物を貪食した樹状細胞やマクロファージはリンパの流れにのって、リンパ節に移動する。リンパ節では、ヘルパーT細胞に抗原提示して、ヘルパーT細胞を活性化する。活性化されたヘルパーT細胞は種々のサイトカインを分泌する。抗原刺激を受けたB細胞は、ヘルパーT細胞が分泌したサイトカインの作用により増殖し、抗体産生細胞である形質細胞に分化する。産生された抗体は、抗原抗体反応などにより、異物を排除する。これは、獲得免疫である。はじめて異物が侵入したとき、まずB細胞はIgMを分泌する形質細胞に分化し、少し遅れてIgGを分泌する形質細胞が増加する。これを、一次免疫応答という。一次応答を起こしたT細胞とB細胞の一部はメモリー細胞として長く体内に残る。異物が再び侵入したときは、メモリー細胞が迅速かつ強力に反応してIgGを産生する形質細胞が増加する。これを、二次免疫応答という。

(5)× IgAは、分泌型の免疫グロプリンである。
 抗体の基本形は、2本のH鎖と2本L鎖からなるYの字に似た形である。IgGは、血漿中で最も多い抗体である。胎盤を通過する。IgMは、抗原が侵入したとき、最初に作られる抗体である。5量体なので、凝集・細胞溶解の効率が高い。IgAは、分泌液中に多く含まれる抗体である。2量体である。IgEは、肥満細胞に付着する。即時型アレルギーに関与する。IgDは、B細胞の抗原受容体である。
 抗体の機能には、中和作用、オプソニン作用、補体活性化作用がある。中和抗体は、ウイルスの中和を行い、不活性化する。オプソニン作用とは、微生物の表面に抗体が結合することにより、好中球やマクロファージによる貪食を促進することである。補体(complement)は、約20種類の血漿たんぱく質で、感染防御や炎症反応に関与する。補体は、微生物の成分や抗体により活性化され、一連の反応により溶菌作用、オプソニン作用、炎症反応を引き起こす。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2015-02-02 17:44 | 第28回国家試験 | Comments(0)