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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

29-30 細胞・組織にみられる変化に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)急性細菌感染の浸潤細胞は、主にリンパ球である。
(2)急性炎症では、血管の透過性は低下する。
(3)アミロイド変性は、胞肪変性の1つである。
(4)アポトーシスは、ブログラムされた細胞死である。
(5)過形成は、組織を構成する細胞の容積が増大する。

(1)× 急性細菌感染の浸潤細胞は、主に好中球である。
 急性炎症の浸潤細胞は、主に好中球である。一方、慢性炎症の浸潤細胞は、主にリンパ球である。好中球は、白血球の中でもっとも多く、化学走性と貪食作用(食作用)により病原細菌などの異物をとり込んで消化・分解する。膿は、病原細菌などの異物を処理して死滅した好中球の残がいである。

(2)× 急性炎症では、血管の透過性は亢進する。
 急性炎症の特徴は古代から知られている。紀元1世紀頃ケルススが、急性炎症の四徴候として、発赤、腫脹、熱感、疼痛を記載した。続いて、2世紀頃ガレノスが、これに機能障害を加えて急性炎症の五徴候とした。発赤は、毛細血管の拡張により、局所の血液量が多くなった状態である。局所のヘモグロビン量が増えるので赤く見える。腫脹は、毛細血管の透過性が亢進して、滲出液が増加し、間質に浮腫が起こった状態である。熱感は、局所の血流増加による皮膚温度の上昇である。疼痛は、物理的、化学的損傷が、局所の痛覚をつかさどる神経を刺激することよって起こる症状である。機能障害は、上記の4徴候の結果、炎症を起こしている局所の機能障害が起こる。

(3)× アミロイド変性は、たんぱく質の変性の1つである。
 アミロイド(amyloid)の「アミロ(amylo-)」は、「デンプン」のことである。「オイド(-oid)」は、「-のような物」という意味である。当初、ヨウ素でんぷん反応と似た反応をすることから、「アミロイド(デンプンのような物)」という名前が付けられたが、その後の研究で、実は、たんぱく質が細胞間質に沈着したものであることが分かった。アミロイドが細胞間質に異常に蓄積することをアミロイド変性という。アミロイド変性の代表例は、アルツハイマー型認知症の老人斑である。

(4)○ アポトーシスは、ブログラムされた細胞死である。
 「アポ(apo-)」は、「離れて」という意味である。「トーシス(ptosis)」は、「下降」という意味である。枯れた木の葉が枝から落ちる様が、まさにアポトーシスである。アポトーシス(apoptosis)とは、障害を受けた細胞が壊死に陥る前に、自ら死んでいく方法である。壊死が殺人事件だとすると、アポトーシスは覚悟の自殺である。アポトーシスでは、まず、細胞内でDNAやたんぱく質の分解が起こり、細胞自体も小さく断片化する。しかし、細胞膜は最後まで保たれているので周囲の組織に炎症が起こることはない。断片化した細胞は、マクロファージによりきれいに処理されるので、アポトーシスになった細胞は跡形もなく消えてしまう。障害を受けた病的な細胞だけでなく、私たちの体の発生の段階では、不必要になった組織の細胞はアポトーシスによって消失する。これは正常な生命現象としてプログラムされていることから、プログラム細胞死と呼ばれる。

(5)× 過形成は、組織を構成する細胞数が増大する。
 過形成とは、組織を構成する細胞一つひとつの大きさは変わらないが、細胞数が増加して臓器・組織が大きくなることである。これに対し、肥大とは、組織を構成する細胞数は変わらないが、一つひとつの細胞の容積が増大して臓器・組織が大きくなることである。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2015-08-26 11:33 | 第29回国家試験 | Comments(0)