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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

29-42 神経系の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)脳神経は、31対である。
(2)神経細胞間の接合部は、ニューロンと呼ばれる。
(3)摂食中枢は、視床下部にある。
(4)副交感神経が興奮すると、唾液分泌は減少する。
(5)神経活動電位の伝導速度は、無髄線維が有髄線維より速い。

(1)× 脳神経は、12対である。
 脳から出る末梢神経を脳神経といい、全部で12対ある。12対の脳神経の名前と主な機能は覚えておこう。31対は、脊髄神経の数である。脊髄は、頚髄、胸髄、腰髄、仙髄の4部に分けられ、頚髄から頚神経が、胸髄から胸神経が、腰髄から腰神経が、仙髄から仙骨神経がでる。頚神経は8対,胸神経は12対,腰神経は5対,仙骨神経は5対,尾骨神経は1対なので、合計31対になる。第1頚神経(C1)は、後頭骨と第1頚椎の間から、第8頚神経(C8)は第7頚椎と第1胸椎の間からでる。それ以下の脊髄神経の番号(Th1~12、L1~5、S1~5、Co)は、すぐ上の椎骨の番号と一致する。脊髄の下端は、第1腰椎の高さで終わっていて、それより下位の脊髄神経はクモ膜下腔のなかを馬尾となって下行する。

(2)× 神経細胞間の接合部は、シナプスと呼ばれる。
 神経組織を構成する機能単位を、ニューロンという。ニューロンは、神経細胞体と突起からなる。突起には、樹状突起と軸索がある。樹状突起は、他のニューロンからの興奮を受け取り、細胞体へ伝える。軸索は、興奮を細胞体から軸索の末端(神経終末)へ伝導する。神経終末は、他の神経細胞とシナプスでつながっている。軸索の末端の細胞膜(シナプス前膜)と他の神経細胞の細胞膜(シナプス後膜)の間にはシナプス間隙がある。シナプス間隙では、神経伝達物質により、興奮が伝達される。シナプス伝達は一方向である。

(3)○ 摂食中枢は、視床下部にある。
 視床下部外側野には摂食中枢があり、視床下部腹内側核には、満腹中枢がある。摂食中枢と満腹中枢の相互作用により摂食行動が調節されている。

(4)× 副交感神経が興奮すると、唾液分泌は減少する。
 一般に、ある臓器には交感神経と副交感神経の両方が分布している。これを二重支配という。一般に、ある臓器の機能に対して、交感神経と副交感神経は、一方が促進すると、他方は抑制するというように相反する作用を有する。これを拮抗支配という。交感神経と副交感神経の活動は、ONかOFFという調節でなく、両者の緊張のバランスで調節している。これを緊張支配という。さて、唾液腺は、以上の原則の例外であり、交感神経と副交感神経の両方が唾液の分泌を促進する。しかし、交感神経が緊張したときは、唾液腺の血管が収縮し、血流が少なくなるので濃くてネバネバした唾液が出る。一方、副交感神経が緊張したときは、多量の水分を含むサラサラした唾液が出る。

(5)× 神経活動電位の伝導速度は、有髄線維が無髄線維より速い。
 軸索の興奮の伝導速度は、細い神経線維より太い神経線維の方が速く、無髄神経線維より有髄神経線維の方が速い。有髄神経線維の伝導速度が速い理由は、跳躍伝導を行うからである。有髄神経の髄鞘がある部分は脂質を多く含み、電気抵抗が高く局所電流は流れないので、電流は隣のランヴィエ絞輪に流れて活動電位を起こす。これを跳躍伝導という。無髄神経線維は、跳躍伝導ができず、局所電流で伝達されるので伝導速度が遅い。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2015-11-25 17:22 | 第29回国家試験 | Comments(0)