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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

29-43 呼吸器系の構造・機能・病態に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)左肺は、上葉、中葉、下葉からなる。
(2)気管支喘息では、拘束性障害を呈する。
(3)1秒率とは、1秒間に呼出する量の1回換気量に対する割合をいう。
(4)COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、安静時エネルギー消費量(REE)は減少する。
(5)アドレナリン(エピネフリン)は、気管支を拡張させる。

(1)× 左肺は、上葉、下葉の2葉からなる。
 右肺は、上葉、中葉、下葉の3葉からなる。右の3葉に対して、左が2葉で足りる理由は、「左は心臓があるために、肺の体積が少し小さくて良いから」と覚えておこう。

(2)× 気管支喘息では、閉塞性障害を呈する。
 気管支喘息は、気道の過敏が原因であり、アレルゲンによる特異的刺激や寒冷・大気汚染など非特異的刺激により気道が閉塞して発作が生じる気道の慢性炎症性疾患である。原因となるアレルゲンがあるものをアトピー型、ないものを非アトピー型という。小児の90%以上がアトピー型であり、成人の30%は非アトピー型である。症状は、発作性の咳、喘鳴、呼吸困難である。発作時のみられる気道閉塞は可逆的であり、自然にあるいは治療により改善する。アスピリンなど非ステロイド系解熱性鎮痛薬により誘発されるものをアスピリン喘息という。運動により換気が増大し、気道の冷却、水分の喪失により誘発されるものを運動誘発喘息という。

(3)× 1秒率とは、1秒間に呼出する量(1秒量)の努力肺活量に対する割合をいう。
 最大吸気位から最大呼気位まで、最大の速度で吐き出した時の空気の量を「努力肺活量」という。努力肺活量の最初の1秒間に排泄する呼気の量を「1秒量」という。1秒量が、努力肺活量に占める割合を「1秒率」という。

(4)× COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、安静時エネルギー消費量(REE)は増加する。
 COPDは、慢性の咳、痰、呼吸困難を主訴とし、緩やかに進行する不可逆的な疾患である。COPDは、慢性気管支炎と肺気腫の病変がさまざまな程度に存在する。慢性気管支炎とは、1年のうち3か月以上(冬季)の咳・痰が2年以上持続するものをといい、臨床症状に基づく診断である。肺気腫とは、肺胞壁の破壊により終末細気管支より末梢の気腔が拡大した状態をいい、病理組織学に基づく診断である。閉塞性換気障害では、空気を吸い込むときは、肺が膨張するので、気道も開くが、空気を吐き出すときは、肺が収縮するので、気道も押しつぶされて閉塞し、肺胞に入った空気を吐き出せなくなる。肺の中に残る空気(残気量)が増加して、肺の過膨張が起き、肺胞構造が破壊される。中高年以降に発症し、わが国では50歳以上の男性に多い。タバコ・大気汚染などの障害性の物質に対して異常な炎症反応が起こり、非可逆性の気道閉塞が進行する。健常人の安静時では、吸息時には呼吸筋を使うが、呼気時には呼吸筋を使わない。COPD患者では、呼気が困難になるために、呼気時にも呼吸筋を使うのでREEは増加する。

(5)○ アドレナリン(エピネフリン)は、気管支を拡張させる。
 草原でライオンに襲われたとき、交感神経が緊張してアドレナリンが全身を駆け巡る。急いで走って逃げなければいけないので、気管支を拡張して酸素をたくさん取り込まなければならない。よって、気管支平滑筋は、交感神経刺激で弛緩し、副交感神経刺激で収縮する。気管支平滑筋が弛緩すると気管支は拡張し、収縮すると気管支は狭くなる。アドレナリンは、気管支平滑筋のα2アドレナリン受容体に結合して、気管支を拡張させる。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2015-12-07 17:33 | 第29回国家試験 | Comments(0)