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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

29-47 出血性疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)新生児メレナは、ビタミンB6欠乏症である。
(2)特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、ビタミンK欠乏症である。
(3)壊血病では、プロトロンビン合成が抑制される。
(4)血友病は、内因子の欠乏により生じる。
(5)播種性血管内凝固症候群(DIC)では、線溶系が亢進する。

(1)× 新生児メレナは、ビタミンK欠乏症である。
 メレナ(melena)は、黒色便のことである。メラ(mela-)は黒いという意味である。ちなみに、メラノーマ(melanoma)悪性黒色腫のことである。便が黒いのは、ヘモグロビンが消化液により変質して黒くなっているのである。つまり、便が黒いのは、上部消化管から出血があるということである。よて、新生児メレナとは、新生児の上部消化管出血のことである。新生児メレナの原因として、ビタミンK欠乏症がある。ビタミンKは、ビタミンK依存性カルボキシラーゼの補酵素として働く。ビタミンK依存性カルボキシラーゼは、たんぱく質のグルタミン酸残基に、カルボキシル基(COOH)を付加して、γ‐カルボキシグルタミン酸残基に変換する酵素である。血液中に存在する14種類の凝固因子のうち、Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹは、ビタミンK依存性凝固因子と呼ばれる。この4因子は肝臓で合成されるたんぱく質であるが、合成にはビタミンK依存性カルボキシラーゼ活性が必須である。ビタミンK欠乏症では、凝固因子の欠乏により出血傾向が出現する。

(2)× 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、原因不明の血小板減少症である。
 「特発性(idiopathic)」とは、「特定の原因が見当たらない」という意味で、医学的には原因不明の病名に使われる。原因不明であるが、自己抗体による血小板の破壊亢進が原因であると考えられている。血小板の減少により皮下出血が起こり、青あざ(紫色の斑点)ができた状態を「紫斑病」という。

(3)× 壊血病では、コラーゲン合成が障害される。
 壊血病(scurvy)は、ビタミンC欠乏症である。ビタミンCは、コラーゲン合成においてプロリンからヒドロキシプロリンを生成する酵素活性に必須である。コラーゲンは、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンを主成分とする3本のペプチド鎖がらせん状構造をなしているものである。Ⅰ型コラーゲンは、もっとも多く、結合組織、骨組織、歯の象牙質に存在する。Ⅱ型コラーゲンは、軟骨組織に多く存在する。Ⅲ型コラーゲンは、胎児の血管や皮膚、細網線維に多く存在する。Ⅳ型コラーゲンは、基底膜の主成分である。ビタミンCが不足すると、コラーゲン合成が障害されるので、結合組織が脆弱になる。そのため血管壁も脆弱になり、出血傾向が出現する。

(4)× 血友病は、第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の欠乏により生じる。
 血友病には、血友病A(第Ⅷ因子欠乏、古典的血友病)、血友病B(第Ⅸ因子欠乏、Chrismtmas病)の二病型がある。血友病は、伴性劣性遺伝するので発症するのは男性だけであり、女性は保因者となるが発症しない。

(5)○ 播種性血管内凝固症候群(DIC)では、線溶系が亢進する。
 播種性血管内凝固症候群(DIC, disseminated intravascular coagulation)は、何らかの理由で、全身の血管内で血栓が作られる病態である。その結果、血小板の消費増加による血小板数の減少と血漿フィブリノーゲン値の低下、血管内血栓形成増加に伴う血栓の分解産物であるフィブリン分解物の増加、プロトロンビン時間(PT)の延長などの検査所見が見られる。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2015-12-09 14:12 | 第29回国家試験 | Comments(0)