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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

29-48 免疫に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)好中球は、抗体を産生する。
(2)マクロファージは、抗原提示を行う。
(3)形質細胞は、細胞性免疫を担う。
(4)母乳中の抗体による免疫は、能動免疫である。
(5)抗体は、血漿のアルブミン分画にある。

(1)× 好中球は、抗体を産生する。
 好中球は、白血球の中でもっとも多い白血球である。化学走性と貪食作用(食作用)により、病原細菌などの異物をとり込んで消化・分解する。細菌感染で桿状核好中球の増加が起こることを、核の左方移動という。膿は、病原細菌などの異物を処理して死滅した好中球の残がいである。抗体は、リンパ球の一種ではB細胞が分化した形質細胞が産生する。

(2)○ マクロファージは、抗原提示を行う。
 血液中の単球が組織に出ると、マクロファージ(大食細胞)になる。マクロファージは、貪食作用により、異物を処理する。マクロファージは、取り込んだ異物を分解し、その断片を抗原として細胞表面でT細胞に提示する。抗原を提示する分子には、MHCクラスⅠとMHCクラスⅡがある。MHCは、major histocompatibility complexの頭文字である。ヒトのMHCは、ヒト白血球型抗原(human leukocyte antigen, HLA)である。MHCクラスⅠは、すべての細胞に発現している。ウイルスに感染した細胞内で合成された抗原を提示する。抗原ペプチドの断片化は、プロテアソームで行われ、細胞傷害性T細胞(CD8陽性細胞)によって認識される。細胞性免疫に関与する。MHCクラスⅡは、抗原提示細胞(マクロファージや樹状細胞)に発現している。エンドサイトーシスによって取り込まれた外来抗原を提示する。抗原ペプチドの断片化は、リソソームで行われ、ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)によって認識される。液性免疫に関与する。

(3)× 形質細胞は、液性免疫を担う。
 形質細胞は、B細胞が分化した細胞で、抗体を分泌するので、液性免疫を担う。細胞性免疫は、抗原特異的な細胞傷害性T細胞の活性化により抗原を排除する免疫である。

(4)× 母乳中の抗体による免疫は、受動免疫である。
 抗体は、病気を引き起こす病原体を排除する。その抗体を、自分で作り出す免疫を能動免疫という。一度ある病気にかかると、二度と同じ病気にかからないような免疫は、獲得免疫というが、これは自分の免疫系を活性化して、特異的な抗体を作り出しているので能動免疫である。これに対し、受動免疫は、人が作った抗体をもらって、病原体を排除する方法である。例えば、ハブにかまれたときハブ毒に対する抗体を投与することは、自分で抗体を作っていないので受動免疫である。乳児は、母親の母乳中に含まれる抗体を飲むことによって、感染を防いでいる。その抗体は、自分で作っていないので受動免疫である。

(5)× 抗体は、血漿のγグロブリン分画にある。
 血漿には、100種類以上のたんぱく質が溶け込んでいる。一番多いたんぱく質はアルブミンであり、膠質浸透圧や血液中の物質輸送に関与している。アルブミン以外のたんぱく質を総称してグロブリンという。グロブリンは電気泳動の移動度により、α1アルブミン分画、α2グロブリン分画、βグロブリン分画、γグロブリン分画に分けられる。抗体は免疫グロブリンとも呼ばれ、γグロブリン分画に含まれる。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2015-12-14 17:33 | 第29回国家試験 | Comments(0)