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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

30-36 神経系の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)交感神経は、脊髄から起始する。
(2)交感神経が興奮すると、小腸の運動は促進される。
(3)迷走神経が興奮すると、胃酸の分泌は抑制される。
(4)顔面神経は、咀嚼筋を支配する。
(5)舌咽神経は、舌の前方2/3の味覚を伝達する。

(1)〇 交感神経は、脊髄から起始する。
 交感神経の節前神経は、胸髄と腰髄(第1胸神経~第3または第4腰神経)の前根から出て、脊柱の両側にある交感神経節に入る。交感神経節は、上下に数珠状に連なり交感神経幹をつくる。頭頚部の交感神経(眼、涙腺、唾液腺に分布)は、交感神経幹が上方に伸びた上頚神経節から分布する。多くの交感神経は、交感神経幹でニューロンを換えて節後神経となって各臓器に分布する。腹部内臓に分布する交感神経のなかには、腹腔神経節、上腸間膜神経節、下腸間膜神経節でニューロンを換えるものもある。

(2)× 交感神経が興奮すると、小腸の運動は抑制される。
 食物の消化吸収は、体がリラックスした状態で行われる。そのため、胃腸の運動、消化液の分泌などは副交感神経の興奮により促進される。交感神経は、ライオンに襲われて逃げる時のような緊急事態により興奮する。緊急事態では胃腸の消化吸収を抑制し、骨格筋の活動を支えるために血液を骨格筋に送る。

(3)× 迷走神経が興奮すると、胃酸の分泌は促進される。
 迷走神経は、副交感神経である。副交感神経の興奮は、胃酸の分泌を促進する。副交感神経の中枢は、脳幹と仙髄にある。脳幹から出る節前神経は、動眼神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経の4つの脳神経とともに中枢神経から出る。仙髄から出る節後神経は、骨盤内蔵神経として出る。副交感神経(節前神経)の多くは、支配器官の神経叢内で節後神経に換わる。

(4)× 三叉神経は、咀嚼筋を支配する。
 咀嚼筋を支配する脳神経は三叉神経である。ここで、顔面神経と三叉神経の支配関係をまとめておく。顔面神経は、運動神経、知覚神経、副交感神経の神経線維(軸索)を含む。運動神経は顔面表層の筋肉(表情筋)を支配し、知覚神経は舌の前方3分の2の味覚を支配し、副交感神経は涙腺・唾液腺(舌下腺・顎下腺)の分泌を促進する。三叉神経は、運動神経と知覚神経の神経線維(軸索)を含む。運動神経は咀嚼筋を支配し、知覚神経は顔面・鼻腔・口腔内の知覚を支配する。咀嚼を行う筋肉には、咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋がある。

(5)× 舌咽神経は、舌の後方3分の1の味覚を伝達する。
 味覚を受容する味覚受容器は、味蕾にある味細胞である。味蕾は、舌表面の茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭に分布し、糸状乳頭には味蕾は存在しない。味蕾は、口蓋や咽頭の粘膜にも分布している。味覚は、水溶性の化学物質によって起こる化学覚である。酸味、塩味、甘味、苦味を4つの基本味という。4つの基本味に、グルタミン酸やイノシン酸によるうま味を加えたものを5つの基本味という。すべての味覚は、5つの基本味の組み合わせによって生じる。味細胞の先端の味毛には受容体があり、唾液や水に溶けた物質が受容体に結合することにより味細胞に興奮が発生する。塩味と酸味は、イオンチャネル型受容体、甘味、苦味、旨味は、Gたんぱく質共役型受容体により受容される。味細胞からの求心性の興奮は、舌の後ろ3分の1では舌咽神経が、前3分の2では顔面神経が、舌以外の口蓋や咽頭では迷走神経が伝導する。大脳皮質味覚野は、島皮質にある。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2016-07-26 13:05 | 第30回国家試験 | Comments(0)