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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

30-44 感染症に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)エイズ(AIDS)では、CD4陽性リンパ球が増加する。
(2)MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の感染経路は、接触感染である。
(3)麻疹の感染経路は、経口感染である。
(4)結核は、新興感染症である。
(5)ヘリコパクター・ピロリ菌は、ウレアーゼ活性をもつ。

(1)× エイズ(AIDS)では、CD4陽性リンパ球が減少する。
 ヒト免疫不全ウイルス(HIV, human immunodeficiency virus)に感染した状態をHIV感染症という。HIVは、CD4陽性リンパ球(ヘルパーT細胞)に感染し、CD4陽性リンパ球数を減少させる。CD4陽性リンパ球は液性免疫と細胞性免疫の双方を活性化することから、HIV感染によりCD4陽性リンパ球が減少すると免疫能が低下する。その結果、免疫不全が進行して日和見感染や悪性腫瘍が生じやすくなった状態を後天性免疫不全症候群(AIDS, acquired immunodeficiency syndrome)という。感染初期は多くの場合無症状であるが、発熱、リンパ節腫脹などインフルエンザ様の症状が出ることがある。数年~十数年後リンパ節腫脹、体重減少、発熱、下痢などAIDS関連症候群の時期に入る。その後、カリニ肺炎やカポジ肉腫などAIDSの指標となる疾患が出現によりAIDSを発症する。

(2)〇 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の感染経路は、接触感染である。
 MRSAは、保菌者との接触、あるいは汚染された者との接触により感染する。

(3)× 麻疹の感染経路は、飛沫感染である。
 感染経路は接触感染、空気感染、経口感染、経皮感染、経胎盤感染に分類される。接触感染には感染者にキス・性交などで直接接触する場合と、汚染されたタオルなど間接的に接触する場合がある。空気感染には近距離で唾液がかかるなどの飛沫感染、病原体を含む埃を吸い込むなどの塵埃感染がある。経口感染は汚染された水や食物を摂取して消化管から感染するものである。経皮感染には、ダニや蚊など節足動物を媒介とする感染や汚染された注射器の使用による感染が含まれる。経胎盤感染は母親から胎児への垂直感染である。主なウイルスの感染経路は、以下の通りである。
 水痘 - 空気感染、飛沫感染、接触感染
 日本脳炎は - 「コガタアカイエカ」の媒介による経皮感染
 麻疹 - 飛沫感染
 流行性耳下腺炎 - 飛沫感染
 A型肝炎 - 経口感染

(4)× 結核は、再興感染症である。
 再興感染症とは、かつて流行していたが、抗生物質の利用や公衆衛生の改善により、発症者の数が一時期は減少していたが、最近になって再び発症者が増加し、注目されるようになった感染症の総称である。近年注目されている再興感染症としては、結核、マラリア、デング熱、狂犬病、黄色ブドウ球菌感染症などがある。
 新興感染症は「かつては知られていなかった、この20年間に新しく認識された感染症で、局地的に、あるいは国際的に公衆衛生上の問題となる感染症」である。世界保健機関(WHO)が1990年に定義したものなので、一般には1970年以降に発生したものが新興感染症として扱われている。主な新興感染症には、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、ウエストナイル熱、エボラ出血熱、クリプトスポリジウム症、クリミア・コンゴ出血熱、後天性免疫不全症候群(HIV)、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、腸管出血性大腸菌感染症、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)感染症、マールブルグ病、ラッサ熱などがある。

(5)〇 ヘリコパクター・ピロリ菌は、ウレアーゼ活性をもつ。
 従来,胃内は強酸性のため無菌と考えられてきたが、1983年オーストラリアで、ヒト胃粘膜からH.ピロリが発見された。H.ピロリは発育が遅いために、通常の培養法では検出できなかったが、担当の研修医が培地をふらん器の中に置き忘れて、イースターの休暇に入り、帰ってきてみたらコロニーが形成されていたことから発見された。H.ピロリは、ウレアーゼ活性をもち、尿素を分解してアンモニアを発生させる。そのアンモニアにより胃酸(塩酸)を中和して胃内で生き延びる場所を確保している。研究者が自分で菌を飲んで胃炎発症、除菌により治癒を確認したことから、胃炎、胃潰瘍との関連が指摘された。1994年にはWHOによりH.ピロリを胃癌発ガン関与物質と認定された。食道癌は逆に発症率を低下させるといわれている。日本人では,40歳以降で70~80%が感染している。不活性な球状構造で糞便や唾液に存在し、経口感染により胃内に入って活性ならせん上の桿菌となると考えられている。

正解(2)、(5)
by kanri-kokushi | 2016-08-02 11:30 | 第30回国家試験 | Comments(0)