人気ブログランキング | 話題のタグを見る

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

3125 症候に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1)直腸温は、腋窩温より低い。

2)起座呼吸(起坐呼吸)は、呼吸を楽にするために座位をとる状態である。

3)タール便は、直腸からの出血でみられる。

4)高張性脱水は、水に比べてNaが多く喪失した場合にみられる。

5JCSJapan Coma Scale)は、呼吸機能の指標である。


1)× 直腸温は、腋窩温より高い。

 身体の表面(殻)の温度は環境温に影響されるので、3037℃で変化する。しかし、身体の深部(芯)の温度は環境温の影響を受けにくい。体温とは、芯の温度のことであり、通常37℃である。体温を測定するということは、芯の温度を測定することであるが、体温計を体の芯に差し込むことは簡単にはできないので、日常的にはできるだけ芯に近い体表面の温度を測定することになる。腋窩、口腔、直腸が測定部位として用いられるが、芯との近さに差があるので、測定値にも差がある。一般に、腋窩温(平均36.6℃)に対して、口腔温は0.20.5℃高く、直腸温は0.51.0℃高い。腋窩温<口腔温<直腸温と覚えておこう。


2)○ 起座呼吸(起坐呼吸)は、呼吸を楽にするために座位をとる状態である。

 起座呼吸とは、左心不全で出現する症状である。左心不全では、左室からの血液の駆出量が減少し、肺静脈に血液がうっ滞する。その結果、肺うっ血が起こり、増加した肺の間質液が肺胞内や気道内に濾出液として染み出てくるのでガス交換が障害されて呼吸困難になる。臥位になると心臓に還流する血液量が増加するので、肺うっ血が悪化して呼吸困難が増悪するが、座位になると重力により心臓に還流する血液量が減少するので、肺うっ血が軽減し、呼吸が楽になる。


3)× タール便は、上部消化管からの出血でみられる。

 下部消化管からの出血で、肉眼的に血液を確認できるものを血便という。肛門に近い部位からの出血では、便の表面に付着する新紅色の血液が認められる。肛門から離れるに従い、便と血液が混ざりあった状態の血便になり、さらに肛門から遠くなるとヘモグロビンの変性により黒ずんだ便(メレナ)になる。上部消化管から大量の出血があった場合は液体成分が多くなるので、タール便(コールタールのように真っ黒でつやがある便)を排泄する。


4)× 高張性脱水は、Naに比べて水が多く喪失した場合にみられる。

 脱水は、細胞外液の浸透圧による高張性脱水、低張性脱水、等張性脱水の3種類に分類される。高張性脱水(水分欠乏型脱水)は、電解質に比べて、水分の喪失が大きい場合に出現する。高Na血症になるために血液浸透圧が上昇し、水分は細胞内から細胞外に移動するので血液濃縮は起こりにくい。主な原因は、水分摂取不足、大量の発汗、乳幼児の発熱・嘔吐・下痢、尿崩症(抗利尿ホルモン欠乏)などである。低張性脱水(食塩欠乏型脱水)は、水分の喪失に比べて、電解質の喪失が大きい場合に出現する。低Na血症になるために血液浸透圧が低下し、水分は細胞外から細胞内に移動するので血液濃縮が起こり、循環血液量減少による循環不全やショックを引き起こしやすい。主な原因は、嘔吐・下痢の持続による電解質の喪失(老人に多い)があって、不適切な輸液が行われた場合に出現する。等張性脱水(混合型脱水)は、水分、電解質が同じ比率で喪失した場合に出現する。血液浸透圧は正常範囲にあるので、血液濃縮は起こりにくい。症状は失われた水分量による。主な原因は、嘔吐、下痢。血清Na濃度は正常範囲内である。


5)× JCSJapan ComaScale)は、意識障害の指標である。

 JCSは、日本で作られた昏睡の程度を表す尺度(スケール)とで、意識障害の深度の分類として利用されている。覚醒している場合は、1ケタの点数(03)で表現される。刺激に応じて一時的に覚醒する場合は、2ケタの点数(1030)で表現される。刺激しても覚醒しない場合は、3ケタの点数(100300)で表現される。


正解(2
by kanri-kokushi | 2017-08-23 16:52 | 第31回国家試験 | Comments(0)