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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

3132 循環器疾患の成因と病態に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1)くも膜下出血は、心房細動で起こる。

2)肺塞栓は、静脈血栓症で起こる。

3)右心不全では、肺うっ血が生じる。

4)狭心症では、心筋壊死が生じる。

5)腎血管性高血圧では、レニン分泌が低下する。


1)× 心源性脳梗塞は、心房細動で起こる。

 クモ膜下出血は、クモ膜下腔を走行する動脈に脳動脈瘤が形成され、それが破裂してクモ膜下腔に出血が起こって発症する。動・静脈奇形が原因でクモ膜下腔へ出血が起こって発症する場合もある。突然の激しい頭痛、髄膜刺激症状(項部硬直)を示すが、脳局所症候はないことが特徴である。

 心房細動では、心房から心室への血流が滞り、心房内に血栓ができる。その血栓が脳動脈に塞栓して脳梗塞を起こすものを、心源性脳梗塞という。昼夜を問わず突然発症し、前駆症状はない。塞栓部位により片麻痺など脳局所症候を示す。心房細動以外に、心臓弁膜症が原因で血栓が形成されることある。


2)○ 肺塞栓は、静脈血栓症で起こる。

 肺動脈の血栓が塞栓することを、肺塞栓という。肺動脈へ流れる血液は、右心室、右心房を通ってくる。右心房へは全身の静脈が集まってくる。よって、肺動脈に塞栓する血栓は、静脈でできたものである。静脈に血栓ができる静脈血栓症は、肺塞栓の原因になる。


3)× 右心不全では、全身の静脈系のうっ血が生じる。

 心不全では、心臓からの血液の拍出が低下するために起こる症状と、静脈系に血液がうっ血する症状が起こる。低拍出症状としては、易疲労性、息切れ、動悸、狭心症状、低血圧などがあり、腎血流の減少により乏尿が起こる。夜間は安静により腎血流が改善するので、夜間多尿が起こる。

 左心不全では、左室の静脈系である肺にうっ血が起こる。症状としては、労作時の息切れ、発作性夜間呼吸困難、心臓喘息などが出現する。重症では起座呼吸(臥位では静脈灌流が増加して肺水腫を起こす)やチアノーゼ(肺ガス交換の障害により還元ヘモグロビンが増加して皮膚、粘膜、爪が暗紫赤色になること)が出現する。

 右心不全では、全身の静脈のうっ血により、全身浮腫、胸水・腹水の貯留、肝臓・脾臓の腫大、頚静脈怒張などが出現する。腸管のうっ血による食欲不振も出現する。


4)× 狭心症では、心筋壊死が生じない。

 狭心症は、一過性、可逆性心筋虚血である。胸痛は23分のことが多く、最大30分以内である。ニトログリセリン舌下が有効である。心電図では、ST下降またはST上昇が発作時に出現し、非発作時は正常範囲のことが多い。心筋英紙は生じないので、血液検査では異常値を認めない。

 心筋梗塞は、不可逆的心筋虚血による心筋壊死である。胸痛は30分以上持続し、ニトログリセリン舌下は無効である。心電図では、T波増高、ST上昇、異常Q波、T波陰転などが時間経過に伴って出現し、発作後も異常所見が残る。血液検査では、ASTALTLDH、トロポニンT、白血球、CRP、赤沈などで異常値が出現する。


5)× 腎血管性高血圧では、レニン分泌が促進する。

 腎血管性高血圧は、線維筋性異形成(約40%)、動脈硬化症(約25%)、大動脈炎症候群(約20%)などが原因で、腎動脈が狭窄して起こる。腎動脈が狭窄すると腎血流が減少し、腎血流が減少するとレニン分泌が促進する。その結果、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系が活性化して血圧が上昇する。


正解(2


by kanri-kokushi | 2017-08-31 15:25 | 第31回国家試験 | Comments(0)