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臨床栄養学

31135 甲状腺疾患の病態と栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1)バセドウ病では、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体抗体が陽性となる。

2)バセドウ病では、エネルギー摂取量を制限する。

3)バセドウ病では、水分摂取量を制限する。

4)橋本病では、甲状腺刺激ホルモンが低下する。

5)橋本病では、たんばく質摂取量を制限する。


1)○ バセドウ病では、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体抗体が陽性となる。

 バセドウ病は、甲状腺のTSH受容体に対する自己抗体が出現する自己免疫疾患である。TSH受容体抗体は、TSH受容体に結合して甲状腺によるホルモンの合成・分泌を促進する。その結果、血液中の甲状腺ホルモン濃度が上昇し、過剰なホルモンによる特徴的な臨床症状を呈する。甲状腺腫大、眼球突出、心悸亢進(動悸)をMerseburgの三徴という。その他、精神症状として、いらいら、不安感、落ち着きのなさなどが、身体症状として、発汗、手指振戦、暑さに弱い、心房細動などが、代謝亢進症状として、食欲亢進にも関わらず体重減少、基礎代謝亢進などが出現する。甲状腺ホルモンは、細胞膜のNa-Kポンプを活性化し、細胞内へのK移行を促進する。その結果、細胞膜は過分極となり、活動電位が発生しにくくなるので麻痺が出現することを低カリウム性周期性四肢麻痺という。


2)× バセドウ病では、高エネルギー食にする。

 代謝の亢進により消費エネルギーが増加するので、高エネルギー食(3540//日)とする。治療により、代謝が正常化すれば、特別な食事療法は必要ない。


3)× バセドウ病では、水分摂取量を十分に補給する。

 代謝が亢進しているときは、体温上昇、発汗増加による脱水を予防するために、十分な水分摂取を行う。


4)× 橋本病では、甲状腺刺激ホルモンが上昇する。

橋本病(慢性甲状腺炎)は、甲状腺組織に対する自己抗体が出現する自己免疫疾患である。抗体の結合により慢性炎症が起こり、甲状腺組織が破壊され、ホルモン産生が低下する。その結果、血中の甲状腺ホルモン濃度が低下し、甲状腺ホルモンの作用不足による特徴的な臨床症状を呈する。主な症状は、皮膚乾燥、嗄声、疲労感、動作緩慢、無気力、思考力の低下、基礎代謝低下、粘液水腫(圧痕を残さない、ムコ多糖類の沈着)、寒さに弱い、食欲不振にもかかわらず体重増加などである。視床下部・下垂体に対する甲状腺ホルモンの負のフィードバック調節が低下するので、下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌は増加し、血中のTSH濃度は上昇する。


5)× 橋本病では、低エネルギー食とし、コレステロールと飽和脂肪酸の摂取を制限する。

 橋本病では、甲状腺ホルモンの減少により代謝が低下し、症候性肥満を起こしやすいので、肥満を予防するために、低エネルギー食とし、適正な体重を維持する。また、脂質代謝の低下により高コレステロール血症を起こしやすいので、コレステロールと飽和脂肪酸の摂取を制限する。甲状腺ホルモン補充療法により代謝が正常化すると、特別な食事療法は必要ない。高コレステロール血症を合併している場合は、300/日以下に制限し、P/S比を1.22.0とする。


正解(1


by kanri-kokushi | 2017-12-07 13:41 | 第31回国家試験 | Comments(0)