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解剖生理学

17-83.門脈に注ぐ静脈である。正しいのはどれか。
(1)肺静脈
(2)肝静脈
(3)上腸間膜静脈
(4)腎静脈
(5)奇静脈

全身を循環する動脈と静脈にはたくさんの名前がついているが、これまで門脈以外はほとんど出題されていない。この問題は奇静脈が何か知らない人が多いだろうが、それ以外は、詳しくはわからなくても、推測して正解がだせる程度の常識は付けておこう。

さて、そもそも、門脈とは何か?これはもともと肝門部を通って入る静脈という意味で、胃・小腸・大腸・脾臓・膵臓など腹腔臓器の血液を集めて肝臓に送る役割を持った血管として名づけられた。しかし現在では毛細血管になる静脈という意味で使われている。心臓から送り出された血液は動脈→毛細血管→静脈というふうに循環して心臓に帰ることが多いが、一部の血液は心臓→動脈→毛細血管→静脈→毛細血管→静脈というふうに循環して心臓に帰ること場合がある。この毛細血管と毛細血管の間にある静脈を門脈という。肝臓に入る門脈以外では下垂体門脈がある。これは、視床下部に分布した毛細血管が集まって静脈になって下垂体に行き、再び毛細血管になるのでこの名前がついている。下垂体門脈がある意義は、視床下部で分泌された下垂体機能を調節するホルモンを下垂体に効率よく届けることにある。

それでは肝臓に入る門脈を考えてみよう。この門脈は胃・小腸・大腸・脾臓・膵臓など腹腔臓器の毛細血管が集まって静脈(門脈)になり、肝臓に入って再び毛細血管になる。つまり、消化管で吸収した栄養素や膵臓が分泌したホルモンを効率よく肝臓に運ぶ役割を持っていることになる。

(1)肺静脈とは、肺に分布する毛細血管が集まって心臓に血液を送る血管だ。門脈とは関係ない。

(2)肝静脈とは、肝臓に分布する毛細血管が集まって下大静脈に血液を送る血管だ。門脈とは関係ない。

(3)上腸間膜静脈はどうだろうか。この静脈を知らなくても推測してみよう。腸間膜とは小腸や大腸を被っている臓側腹膜の続きで、腸管を後腹壁にぶら下げている膜で、腸管に分布する血管や神経が通っている。と、言葉で説明してもわかりにくいだろうから、必ず教科書の絵で確認しておこう。内臓脂肪が蓄積するのは腸間膜の脂肪組織だ。ということだから、上腸間膜静脈とは腸管に分布する毛細血管が集まってできた静脈であることはわかるだろう。門脈に合流する静脈には、上腸間膜静脈下腸間膜静脈脾静脈左胃静脈右胃静脈などがある。

(4)腎静脈とは、腎臓に分布する毛細血管が集まって下大静脈に血液を送る血管だ。門脈とは関係ない。

(5)奇静脈とは、胸部・腹部の体壁に分布する毛細血管が集まって脊柱の右側を上行して上大静脈に血液を送る血管だ。門脈とは関係ない。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2006-03-10 10:33 | 第17回国家試験 | Comments(0)