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解剖生理学

17-84.呼吸に関する筋の記述である。正しいのはどれか。
(1)外肋間筋の収縮・弛緩による呼吸型を胸腹式呼吸という。
(2)横隔膜の収縮・弛緩による呼吸型を腹式呼吸という。
(3)安静時の吸息運動は横隔膜と外肋間筋の弛緩による。
(4)安静時の呼息運動は横隔膜と外肋間筋の収縮による。
(5)横隔膜による呼吸運動は迷走神経によって支配されている。

①外呼吸と内呼吸
肺の肺胞で行われる外気と血液のガス交換(酸素を取り込んで二酸化炭素を排泄)を外呼吸という。組織の細胞が酸素を取り込んで二酸化炭素を放出することを内呼吸という。この問題は、どうやって肺胞の中に外気を取り込み、排出するかを考えればよい。外気を肺の中に取り込むことを吸息という。逆に肺の中の空気を外界の押し出すことを呼息という。

②胸郭を動かす筋肉
さて、肺自体は自分で収縮したり、拡張したりできない。肺は受動的に動かされている。それでは何が動かしているのか?それは、肺を入れている入れ物の容積を大きくしたり、小さくしたりして肺を動かしている。その入れ物のことを胸郭といい、骨と筋肉でできている。胸郭を構成する骨は胸椎肋骨胸骨だ。これはもういいね。わからなければ、教科書を読もう。胸郭の容積を大きくしたり、小さくしたりする筋肉として外肋間筋横隔膜の2つだけは必ず覚えよう。

③外肋間筋で行う呼吸
外肋間筋が収縮すると肋骨を引き上げられる。重力で垂れ下がっていた肋骨を引き上げれば胸郭の容積は大きくなる。これもいいね。わからなければ、肋骨の絵を見てよく考えてみよう。胸郭の容積が大きくなれば、肺の容積もそれに引きずられて大きくなる。すると肺胞も広がり、外気を取り入れるようになる。すなわち、外肋間筋の収縮により吸息が起こる。外肋間筋が弛緩すると肋骨が重力に従って下がるので胸郭は狭くなり、肺胞内の空気は外界に押し出される。これが呼息だ。主に外肋間筋を使って行う呼吸を胸式呼吸という。

④横隔膜で行う呼吸
横隔膜は胸腔と腹腔の境界ある板状(またはドーム状)の骨格筋だ。膜という名前だけど立派な骨格筋で、意思で動かすことができる。胸腔と腹腔では腹腔の圧力の方が高いので、横隔膜が弛緩しているときは上に凸のドーム状の形をしていて、胸腔の容積を狭めている。つまり、横隔膜が弛緩するときは肺も小さくなるので、肺内の空気は押し出され、呼息が起こる。横隔膜が収縮すると、上に凸だった形が平らになる。すなわち、腹腔の内臓を下に押し下げ、胸腔の容積を大きくする。その結果、肺は大きくなり、肺胞も広がって吸息が起こる。主に横隔膜を使って行う呼吸を腹式呼吸という。胸部・腹部に分布する迷走神経は副交感神経の線維であることを考えれば、骨格筋である横隔膜を支配するというのが間違っているということがわかる。ちなみに、横隔膜を支配している神経を横隔神経という。ついでに、外肋間筋を支配している神経を肋間神経という。

外肋間筋というぐらいだから、内肋間筋というのもある。内肋間筋が収縮すると肋骨は下に押し下げられる。つまり、胸腔の容積を小さくする。安静時の呼吸では使わないが、意識的に息を強く吐き出すときは、内肋間筋が収縮する。もうひとつ、強く息を吐き出すときは腹筋が収縮して腹腔の圧力を上昇させて横隔膜を押し上げ、胸腔を狭くするという方法もある。

胸腹式呼吸というのは外肋間筋と横隔膜両方を同じくらい使って行う呼吸である。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2006-03-13 09:36 | 第17回国家試験 | Comments(0)