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解剖生理学

17-88.神経系に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)交感神経末端から分泌される神経伝達物質はアセチルコリンである。
(2)運動神経に存在する神経伝達物質としてドパミンがある。
(3)有髄神経の伝達速度は無髄神経より遅い。
(4)神経線維おける興奮は両方向性に伝導する。
(5)副交感神経末端から分泌される神経伝達物質はアドレナリンである。

①神経細胞(ニューロン)の構成は?
神経の興奮の伝導に関する問題だ。神経細胞(ニューロン)神経細胞体突起から構成されている。神経細胞体には核が存在する。突起には樹状突起軸索がある。樹状突起は他のニューロンからの興奮を受け取る部位だ。軸索は他のニューロンに興奮を伝達する。

②興奮の伝導とは?
さて、ここで使っている「興奮」とは何か?一言で答えるとニューロンの細胞膜局所に発生した活動電位のことだ。活動電位とは何か?細胞の外にはNa+がたくさんあって、細胞の中にはK+がたくさんある。静止状態ではNa+は細胞内に入れないが、K+は細胞外に出て行けるので、細胞外に対して細胞内の正の電荷が少なくなってできる電位差を静止電位という。この細胞膜の局所が刺激されるとNa+が細胞内に流れ込み、細胞内外の電位差が逆転する。これを活動電位という。これは細胞膜の局所で発生する。すると、活動電位が発生した部位とその周辺で局所電流が流れ、これが刺激になって周辺の細胞膜に活動電位が発生する。こうして次々に活動電位の発生が広がっていくことを「興奮の伝導」という。興奮の伝導の方向は周辺すべての方向に伝わるが、軸索のような細い線維の場合は、最初に興奮が発生した部位から両方向に伝導される。

③有髄神経線維と無髄神経線維の伝導速度は?
軸索のことを神経線維ともいう。神経線維には髄鞘を持つ有髄神経線維と持たない無髄神経線維がある。髄鞘とはシュワン細胞が軸索に巻きついてできたものだ。髄鞘と髄鞘の間にはランビエ絞輪という隙間が開いている。髄鞘は脂質の含有量が多く、電気を通さない絶縁体の役目を果たしている。無髄神経線維では興奮を伝導する局所電流は近距離に起こるのに対し、有髄神経線維では髄鞘の部分を飛び越えてランビエ絞輪の部位に活動電位を起こすので伝導速度が速い。これを跳躍伝導という。

④シナプス伝達とは?
1つのニューロンの中では活動電位によって興奮は伝導されるが、あるニューロンから別のニューロンへ興奮が伝導されるときには細胞膜は接していないので局所電流では伝達されない。興奮を伝達する軸索の先端と興奮を受け取るニューロンの細胞膜の間には狭い間隙があって、このような構造をシナプスという。軸索の先端に活動電位が到達すると神経伝達物質が放出され、これが相手の細胞膜上にある受容体に結合して次のニューロンに活動電位を起こす。これをシナプス伝達という。軸索の電気的な伝導に比べて伝達速度は遅く、これをシナプス遅延という。シナプスの伝導は一方向性である。

⑤神経伝達物質とは?
シナプスで興奮を伝導する物質を神経伝達物質という。自律神経は節前線維と節後線維の2つのニューロンで構成されている。節前線維の神経伝達物質は交感神経、副交感神経ともにアセチルコリンであるが、節後線維では交感神経がノルアドレナリン、副交感神経がアセチルコリンである。運動神経が骨格筋とつくるシナプスの神経伝達物質はアセチルコリンである。脳内ではドパミン、グルタミン酸、GABA、エンドルフィンなど50種類以上の神経伝達物質が存在することが知られている。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2006-03-17 09:27 | 第17回国家試験 | Comments(0)