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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

20-24.脂質に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)リノール酸は、n-3系不飽和脂肪酸である。
(2)パントテン酸は、複合脂質である。
(3)ホスファチジルコリンは両親媒性物質である。
(4)ステロイド骨格をもつ物質を総称して、コレステロールという。
(5)1分子のジアシルグリセロールは、2分子のグリセロールを含む。

①脂肪酸と二重結合について
脂肪酸は、炭素が一列に並んで、その一端にカルボキシル基(COOH)がくっついた構造をしている。カルボキシル基があるほうがカルボキシル末端、その反対側がメチル末端(CH3)である。炭素の鎖のつながり方には一重結合(-C-C-)と二重結合(-C=C-)がある。一重結合だけからなる脂肪酸を飽和脂肪酸という。二重結合が1つある脂肪酸を一価不飽和脂肪酸という。二重結合が2つ以上ある脂肪酸を多価不飽和脂肪酸という。炭素の数が18個の脂肪酸の名前は、飽和脂肪酸はステアリン酸、一価不飽和脂肪酸はオレイン酸、2つの二重結合を持つ多価不飽和脂肪酸はリノール酸、3つの二重結合をもつ多価不飽和脂肪酸はリノレン酸である。これは名前だから覚える以外に手はない。さて、n-○系だが、これは二重結合が炭素鎖のどこにあるかを示している。○の部分はメチル末端から数えた炭素の位置を示している。多価不飽和脂肪酸の場合は、CH3末端にもっとも近い二重結合の位置で示す。例えば、CH3末端から数えて3番目の炭素と4番目の炭素の間に二重結合がある不飽和脂肪酸はn-3系になる。オレイン酸は9番目と10番目の間に二重結合があるからn-9系である。リノール酸は6番目と7番目、9番目と10番目の2ヵ所に二重結合があるが、CH3末端に近い方をとってn-6系である。ちなみに、alpha-リノレン酸がn-3系で、gamma-リノレン酸がn-6系だ。

②単純脂質とは?
脂肪酸のカルボキシル基とアルコール(グリセロール)がエステル結合したアシルグリセロール、コレステロールの水酸基(OH)と脂肪酸がエステル結合したコレステロールエステル、長い炭素鎖をもつアルコールと脂肪酸がエステル結合したろう(ワックス)を単純脂質という。グリセロールには水酸基が3つあるので、脂肪酸が1本結合したモノアシルグリセロール、2本結合したジアシルグリセロール、3本結合したトリアシルグリセロールがある。よって、(5)は「1分子のジアシルグリセロールは、2つの脂肪酸(アシル基)を含む」が正しい。

②複合脂質とは?
複合脂質とは単純脂質にリン酸、糖、含窒素化合物が結合したものをいう。単純脂質は水に溶けない疎水性であるが、リン酸、糖、含窒素化合物は水に溶けやすい親水性であることから、複合脂質は両親媒性物質である。複合脂質はリン脂質と糖脂質に大別される。リン脂質のうちグリセロリン脂質と呼ばれるものは、グリセロールに2本の脂肪酸とリン酸が結合し、さらにリン酸にコリンやセリンなど親水性の基が結合している。コリンが結合したグリセロリン脂質がホスファチジルコリン(レシチン)である。分子構造について教科書の図で確かめておこう。パントテン酸はCoAの構成成分として利用されるビタミンの1種であるが、構造上、エステル結合も糖・リン酸も含まないので単純脂質でも複合脂質でもない。

③ステロイド骨格とは?
ステロイド骨格とは4つの環構造からなるもので、ステロイド骨格をもつ脂質を総称してステロイドという。当たり前だけどあらためていわれると「おや?これでいいの?」と思ってしまうが、これでいい。コレステロールはステロイドの1種であり、他に、胆汁酸、ステロイドホルモン(性ホルモンや副腎皮質ホルモン)、ビタミンDなどが含まれている。ステロイド骨格がどんな構造をしているのか教科書の図で確かめておこう。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2006-04-03 09:31 | 第20回国家試験 | Comments(0)