人気ブログランキング | 話題のタグを見る

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

20-27.糖質の代謝に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)グルコース-6-ホスファターゼは、解糖系の酵素である。
(2)グルコースが解糖系によって嫌気的に代謝されると、クエン酸が生成する。
(3)オキサロ酢酸からグルコースの合成は、ミトコンドリア内で進行する。
(4)グルコースがペントースリン酸回路によって代謝される際に、NADPHが生成する。
(5)グリコーゲンの加水分解によってグルコース-1-リン酸が生成する。

グルコースの代謝に関する基本的な問題だが、やや細かい知識が要求されているので、やや難しい問題になっている。ひとつずつポイントを抑えていこう。

(1)解糖系とはグルコースがピルビン酸に分解される過程である。この過程は細胞質で進行し、1分子のグルコースが分解されて、2分子のピルビン酸、2分子のATP、2分子のNADHが産生される。解糖系の最初の酵素はヘキソキナーゼでグルコースからグルコース-6-リン酸を生成する。グルコース-6-ホスファターゼはグルコース-6-リン酸を加水分解してグルコールを生成する糖新生に含まれる酵素である。

(2)解糖系でできたピルビン酸はミトコンドリアに入ってアセチルCoAになる。アセチルCoAはオキサロ酢酸と結合してクエン酸になり、クエン酸回路に入る。クエン酸回路では大量のNADHとFADH2が生成され、これらは電子伝達系に電子を渡す。電子の最終的な受け取り手は酸素である。もしも、ミトコンドリアに十分な酸素が供給されないとNADHとFADH2が蓄積してしまう。するとクエン酸回路の反応は生成物過剰ということで停止してしまう。するとオキサロ酢酸の生成が不足するのでアセチルCoAはクエン酸回路に入れなくなる。すると行き場の無くなったピルビン酸は乳酸を生成する反応に進んでしまう。これが嫌気的な条件下でのグルコースの代謝だ。

(3)オキサロ酢酸からグルコースを合成することを糖新生という。ミトコンドリア内のオキサロ酢酸はリンゴ酸となって細胞質に出て、再びオキサロ酢酸になって、あとは細胞質で糖新生が進行する。解糖と糖新生は細胞質で起こると覚えておこう。

(4)ペントースリン酸回路とは、解糖系のグルコース-6-リン酸のところからわき道にそれ、何段階かの反応を経て、再び解糖系のグリセルアルデヒド-3-リン酸とフルクトース-6-リン酸のところへ返ってくる代謝経路だ。細かいことはいいから、この経路役割としてNADPHリボース-5-リン酸を生成することを覚えておこう。NADPHは、脂肪酸合成をはじめ、細胞内の還元反応で重要な役割を果たしている補酵素である。リボース-5-リン酸はもちろんヌクレオチドの材料だ。ヌクレオチドはATPやDNAなど重要な分子の材料だ。

(5)(4)と(5)どちらが正しいかで迷った人は多いだろう。ある予備校の解答速報でも(5)を正解にしていた。しかし、(5)は正しくない。グリコーゲンはグルコースがつながったものだけど、ホスホリラーゼという酵素により分解されてグルコース-1-リン酸を生成する。その後、グルコース-1-リン酸はグルコース-6-リン酸になって解糖系または糖新生に入る。「あれ?(5)は正しいじゃない」と思うかもしれない。問題文の間違いは加水分解だ。ホスホリラーゼが触媒する反応は加水分解ではなく加リン酸分解だ。加リン酸分解なんて聞いたことがない?グリコーゲン分子にはリン酸は含まれていないが、生成したグルコース-1-リン酸にはリン酸が含まれている。つまり、リン酸を加えることによりグリコーゲンを分解したので加リン酸分解になるわけだ。わかった?

正解(4)
by kanri-kokushi | 2006-04-07 13:34 | 第20回国家試験 | Comments(0)