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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

20-28.脂質の代謝についての記述である。正しいのはどれか。
(1)ヒト体内では、脂肪酸に二重結合は導入されない。
(2)オレイン酸は必須脂肪酸である。
(3)アラキドン酸は、一価不飽和脂肪酸である。
(4)コレステロール合成の律速酵素は、HMG-CoA還元酵素である。
(5)脂質は、たんぱく質と結合してアポたんぱく質を形成する。

(1)(2)哺乳類の体内では、まず、飽和脂肪酸であるステアリン酸(C18:0)が作られて、次に不飽和酵素により不飽和結合が1つできて一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸(C18:1 n-9)が作られる。哺乳類はこれ以上の不飽和結合を作ることができないので、多価不飽和脂肪酸を体内で合成することはできない。だから、リノール酸(C18:2 n-6)やalpha-リノレン酸(C18:3 n-6)を必須脂肪酸として植物油や魚油から摂取する必要がある。

(3)アラキドン酸は炭素数20個の脂肪酸で、カルボキシル末端から数えて5、8、11、14番目の炭素に二重結合がある多価不飽和脂肪酸である。必須脂肪酸は、狭義にはリノール酸とalpha-リノレン酸の2つであるが、広義にはアラキドン酸、EPA、DHAなど多価不飽和脂肪酸に含められる。アラキドン酸はプロスタグランジンロイコトリエンなど生理活性物質の前駆物質である。

(4)コレステロールはアセチルCoAを出発点として体内で20段階以上の反応を経て合成される。この代謝経路を律速酵素は3-ヒドロキシー3-メチルグルタリCoA還元酵素(HMG-CoA還元酵素)である。HMG-CoA還元酵素は3-ヒドロキシー3-メチルグルタリCoAを還元してメバロン酸を生成する。この酵素の阻害薬は高コレステロール血症の治療薬(スタチン系薬)として利用されている。

(5)トリアシルグリセロールとコレステロールエステルのあんこをリン脂質の皮で包み、表面にタンパク質のゴマを振りかけたゴマ団子をリポタンパク質という。「リポ」は脂質という意味だ。さて、「アポ」はどういう意味か?これは「何かから取り去ったもの、分離したもの」という意味だ。リポタンパク質から脂質を取り去った残りのタンパク質がアポリポタンパク質(あるいはアポタンパク質ともいう)だ。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2006-04-07 14:12 | 第20回国家試験 | Comments(0)