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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

20-32.疾患の診断に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)健常者の臨床検査値は、基準値から外れることはない。
(2)チアノーゼは、血液中のヘモジデリンが増加した状態をいう、
(3)ヒトが生きていることを示す徴候を、バイタルサインという。
(4)体温計の検温では、直腸温は腋窩温よりも低い。
(5)呼吸器系から出血した血液を、口腔から排出する場合を吐血という。

(1)基準値あるいは基準範囲は、たくさんの健常者を測定してその分布の中央95%を含む範囲と定義されている。すなわち、健常者の5%は異常値を示す可能性があるということである。基準範囲の決め方は、たくさんの健常者を調べて平均値±2×標準偏差で求めることが多いが、すべての検査値が正規分布するわけではない。また、血糖値、血清コレステロール値、血圧などのように、臨床的に望ましい値として(臨床判断値)基準値が決められることもある。

(2)ヘモグロビンは酸素と結合した酸化ヘモグロビン(鮮紅色)と酸素と結合していない還元ヘモグロビン(暗紫色)がある。チアノーゼとは、呼吸不全や循環不全のためにヘモグロビンと酸素の結合が障害されて、毛細血管内の還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上に増加して、皮膚と粘膜が青~青紫色をおびる状態をいう。ヘモジデリンとは鉄と結合して鉄を貯蔵する役割を持つタンパク質であって、肝臓や骨髄に多く存在する。

(3)「バイタル」とは「生きている」という意味で、バイタルサインとは、ヒトが生きているという状態を表す徴候(サイン)である。脈拍・呼吸・体温を三主要徴候といい、他に意識・瞳孔・血圧・尿量などがある。

(4)体温は腋窩(平均36.6℃)、口腔内(腋窩温より0.2~0.5℃高い)、直腸(腋窩温より0.5~1.0℃高い)などで測定する。測定値により、微熱(37.0~37.9℃)、中等度熱(38.0~38.9℃)、高熱(39.0℃以上)に分類される。体温の変動に関わる要因として、①日内変動(日中高く、夜間低い。変動は1℃以内)、②年齢(小児で高く、加齢とともに低下する)、③性周期(排卵前2週間に対して、排卵後2週間は0.2~0.4℃高い)、④運動、⑤食事などがある。

(5)呼吸から出血した血液を吐き出すことを喀血という。沖田総司が池田屋で吐き出すのは喀血である。吐血は消化管からの出血を吐き出すことをいう。ついでに消化管出血についてまとめておこう。消化管からの出血で肛門から排泄されるものを下血という。トライツ靭帯(十二指腸と空腸の移行部)より口側では吐血または下血になるが、トライツ靭帯より肛門側では下血になる。新鮮血を吐血する場合もあるが、血液が一定時間胃内に停滞するとヘモグロビンが胃液の塩酸によりヘマチンに変化してコーヒー残渣様(黒褐色)の吐血になる。上部消化管からの大量の出血が下血になる場合はタール便(コールタールのように真っ黒でつやがある便)を排泄する。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2006-04-14 13:47 | 第20回国家試験 | Comments(0)