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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

20-46.生殖系の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)ダグラス窩は、膀胱と子宮の間にある。
(2)卵巣には、種々の発達段階の卵胞が散在している。
(3)排卵後にプロゲステロンの分泌は低下する。
(4)更年期には、卵胞ホルモンの分泌は停止する。
(5)黄体形成ホルモンは、卵胞から分泌される。

ダグラス窩という名前はこれまでの国家試験で出たことはないと思うが、その他の問題文はこれまでも繰り返し出題されたものばかりだ。生殖系では、下垂体・卵巣・子宮内膜の変化をホルモン関連させて説明できるようにしておく必要がある。

(1)女性の骨盤腔を横から見た断面図を教科書で見てほしい。前から恥骨結合・膀胱・子宮・直腸・仙骨の順番に並んでいるのがわかるだろう。膀胱と子宮の間を膀胱子宮窩、子宮と直腸の間を直腸子宮窩ダグラス窩)という。ダグラス窩は腹腔で最も低い位置にあることから穿刺や切開により腹腔内の貯留物を採取することが可能で、外科や婦人科領域の診療で重要な場所である。

(2)卵巣の組織は中心部の髄質と周辺部の皮質に分けられる。髄質には結合組織からなり、卵巣門から血管、リンパ管、神経が侵入する。皮質にはさまざまな成熟段階の卵胞黄体白体が存在する。卵胞は1個の卵細胞とそれを包む卵胞上皮細胞からなる。原始卵胞はすべて胎生期につくられ、思春期までは成熟することなく卵巣内で静止している。卵胞が成熟するにつれて、単層であった卵胞上皮細胞は増殖して多層となり、最終的には卵細胞を包む内卵胞膜、その外側を包む外卵胞膜を形成し、中に卵胞液を含む成熟卵胞グラーフ卵胞)となる。月経周期のはじめに複数の卵胞が発育を始めるが、そのうち1つの卵胞だけが成熟卵胞になり、その他は萎縮する。完全に成熟した卵胞は破裂して、卵細胞は腹腔内に放出(排卵)され、卵管に取り込まれて子宮に運ばれる。排卵後の卵子の寿命は受精が起こらなければ12~24時間である。卵細胞を失った卵胞は黄体となる。黄体は着床が行われない場合は排卵後6~8週で消滅し、瘢痕である白体となる。

(3)(4)(5)月経終了から約2週間(増殖期)は下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用で卵胞が成熟する。卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌され、子宮内膜を増殖・肥厚させる。月経終了後14日目頃エストロゲン分泌がピークに達すると、エストロゲンの正のフィードバック作用により下垂体から黄体形成ホルモン(LH)の急激な分泌増加(LHサージ)が起こって排卵が起こり、排卵後の卵胞は黄体になる。黄体から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で子宮内膜は分泌期に移行する。プロゲステロンは受精卵が着床するのに適した状態を作り出す。妊娠が起こらないときは、約2週間後に黄体が退化し、プロゲステロンの分泌が減少して子宮内膜を維持できなくなり、機能層の脱落が起こって月経(消退出血)となる。増殖期の長さは変動が大きいのに対して、分泌期の長さは比較的安定していることが多い。卵巣がFSH、LHの刺激に反応しなくなり性周期が消失することを閉経という。閉経後はエストロゲン分泌が減少するために、視床下部・下垂体への負のフィードバック作用が低下してFSH、LHの分泌は増加する。

その他、性周期では増殖期に対して分泌期ではプロゲステロンの作用で体温が上昇することを覚えておこう。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2006-05-03 09:46 | 第20回国家試験 | Comments(0)