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臨床栄養学

20-128.糖尿病の運動療法に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a インスリン治療患者では、早朝空腹時の運動療法は避ける。
b 運動療法により、インスリン抵抗性は改善する。
c ケトアシドーシスを合併する患者には、運動療法を指導する。
d 運動療法は、強度が高いほど効果的である。
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

①運動療法の意義は?
 食事療法、運動療法、薬物療法は糖尿病治療の3本柱だ。糖尿病治療でもっとも重要なことは摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスをとって、少ないインスリンを効率よく使うようにすることだ。糖尿病患者が運動療法を実施することにより、以下に示す効果が期待できる。
・肥満を合併した糖尿病患者で、食事療法による減量を促進する。
・食事療法とともにエネルギー摂取と消費のバランスを改善する。
・エネルギー制限による筋肉量(除脂肪体重)の減少を防止する。
・インスリン抵抗性、高血糖、高脂血症,高血圧症を改善する。

②運動療法を行う際の注意は?
 運動療法は糖尿病に様々な効果が期待できるとはいえ、何でもかんでもやれば良いわけではなく、やりすぎることがかえって害になる場合があることを知っておこう。ケトアシドーシスで運動すると交感神経が活発になり、インスリン拮抗ホルモンの分泌も増加して高血糖を助長することになるので、ケトアシドーシスを悪化させることになる。以下に、運動を制限する例を示す。
・極端なコントロール不良(空腹時血糖250mg/dl以上、尿ケトン体陽性)の場合
・増殖性網膜症で新鮮な眼底出血がある場合
・腎不全、心疾患、心肺機能に異常がある場合
・糖尿病性神経障害で、足の感覚喪失、心血管系の自律神経障害がある場合

③具体的な実施方法は?
 運動療法を実施する前に必ずメディカルチェックを受けることが大切である。何でもかんでもやれば良いわけではない。ウォーキングをする場合は、1回15~30分間、1日2回、1日の運動量として歩行は1万歩、消費エネルギーは160~240kcal程度が適当とされている。運動の強度は脈拍数が100~120程度になる運動が適当で、運動強度を強くしすぎるとインスリン拮抗ホルモンの分泌が増加して血糖値が上昇する場合があるので、むやみに激しい運動をすることは避けるほうがよい。運動をする時間は食後高血糖の是正するために食後1~2時間に実施することが望ましい。経口血糖降下剤やインスリン使用中は、低血糖予防のために、原則として空腹時に運動することは禁止する。

aとbが正しいので正解は(1)
by kanri-kokushi | 2006-05-19 11:54 | 第20回国家試験 | Comments(0)