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臨床栄養学

20-138.女性50歳、主婦、身長160cm、体重60kg、BMI 23.4kg/m2、以前より糖尿病で受診しているが、糖尿病性腎症と診断された。血圧正常、糸球体濾過値(GFR)正常、尿たんぱく2(+)が数ヶ月持続。適切な栄養管理はどれか。
(1)標準体重当たりエネルギー20~25kcal/kg、タンパク質1.0~1.2g/kg、食塩10g/日
(2)標準体重当たりエネルギー25~30kcal/kg、タンパク質1.0~1.2g/kg、食塩10g/日
(3)標準体重当たりエネルギー25~30kcal/kg、タンパク質0.8~1.0g/kg、食塩7~8g/日
(4)標準体重当たりエネルギー35~40kcal/kg、タンパク質0.8~1.0g/kg、食塩7~8g/日
(5)標準体重当たりエネルギー35~40kcal/kg、タンパク質0.6g/kg、食塩7g/日

 糖尿病性腎症については、臨床データから病期分類ができることと、病期に応じた食事指導ができることが求められている。

①病気分類はどうやって行うか?
 与えられた臨床データから病気分類をしなければならない。まず、どこから見ていけばいいかということだが、試験紙による尿タンパクの検査を最初に見るのがいいだろう。試験紙で陰性ならば第1期または第2期になる。もし、陽性であれば第3期以降ということになる。第1期と第2期は尿中微量アルブミンの排泄量によって区別する。もちろん微量アルブミン排泄が増加していれば第2期だ。微量アルブミンは糖尿病性腎症に早期発見に有用な検査だが、第3期以降では大量に出ているのは明らかだから、検査をする意味がない。
 この女性は尿たんぱくが2+で陽性だから、第3期以降だ。第3期はAとBに分けられる。診断基準によると腎機能が正常であればA、腎機能が低下あるいは尿蛋白が1g/day以上であればBと診断することになっている。腎機能とは腎臓の濾過機能のことなので糸球体濾過値(GFR)で評価する。GFRはクレアチニンクリアランスによって測定される。一般にGFRの低下と尿タンパク排泄の増加は相関するが、GFRが正常範囲にあるのに尿タンパクの排泄が1g/dayを超えている場合をAとするかBとするかは迷うところだろう。診断基準では「または」と表現されているから、一方でも満たせばBと診断すべきなんだろう。この女性の1日尿タンパク排泄量は記載されてないので第3期Aと診断するが、尿タンパク2+ということは尿のタンパク濃度約100mg/dlということで、1日尿量が1500mlとすると1.5gくらいは出ているかもしれないと考えると第3期Bということありうる。まあ、今回は第3期Aということで話を進めよう。

②糖尿病性腎症の食事療法は?
 まず、エネルギー。第1期から第3期A、すなわちGFRが正常範囲にある間は25~30kcal/kg/dayの低エネルギー食とする。(1)の20~25kcal/kg/dayは少なすぎるので×。第3期Bから第4期、すなわちGFRが低下すると30~35kcal/kg/dayと高エネルギー食にする。血液透析をするときは35~40kcal/kg/day、CAPDをするときは30~35kcal/kg/dayとする。
 次に、タンパク質。第2期までは1.0~1.2g/kg/dayで健常人と変わらない量とする。第3期A、すなわち尿タンパクが陽性になると0.8~1.0 g/kg/dayと軽度タンパク制限食にする。第4期では腎不全食として0.6~0.8 g/kg/dayに制限する。
 最後に、食塩。第2期までは制限しない。第3期Aになると7~8g/dayに制限する。第4期になればさらに5~7g/dayに制限する。血液透析では7~8g/dayに制限するが、CAPDでは8~10g/dayとやや緩やかな制限になる。
 (2)はタンパク質制限をしていないので×。(4)はエネルギーが多すぎるので×。(5)はエネルギーが多すぎで、タンパク制限が厳しすぎるので×。

よって、正解は(3)
by kanri-kokushi | 2006-06-15 14:35 | 第20回国家試験 | Comments(0)