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生化学

17-101.エネルギー産生に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a TCAサイクルには、基質レベルのリン酸化による高エネルギー化合物生成反応は存在しない。
b TCAサイクルでは脱水素反応によって、NAD+とFADの還元型が生成する。
c FADの還元型は、電子伝達系と共役した酸化的リン酸化によるATP産生に寄与する。
d NAD+の還元型はATPの産生に寄与しない。
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

 エネルギー産生は、教科書的には解糖→クエン酸回路→電子伝達系と進むのが普通であるが、今日はATP産生から逆にたどってみよう。

①ATP合成
 細胞内で作られるATPの大部分はミトコンドリアで作られる。ミトコンドリアの内膜にはATP合成酵素がある。ATP合成酵素は水車のような構造をしていて、ミトコンドリア内膜の外側から内側へH+が流れ込んでくるときに回転する。この回転を利用してADPにリン酸を一つくっつけてATPを生成する。

②H+の濃度勾配
 ミトコンドリア内膜の内側と外側にはH+の濃度勾配が作られていて、濃度の濃い外側から、薄い内側へ滝を流れ落ちるようにATP合成酵素を回転させながら入ってくる。H+の濃度勾配はどうやって作られるのだろうか?これはミトコンドリア内膜に存在する電子伝達系を電子が次々に渡されていくときに、内膜の内側から外側へくみ出されているからだ。電子の移動がつるべの役割をしてH+をくみ出していると思えばいい。電子伝達系をわたっていく電子は最終的には酸素に渡され、酸素は還元されて最終的に水になる。酸素が水になるまでの中間体が活性酸素だ。

③電子の運搬
 さて、それでは電子はどこからやってくるのか?グルコースは水と二酸化炭素から作られる。二酸化炭素(CO2)の炭素には2個の酸素がくっついている。酸素は電子をひきつけるので、二酸化炭素の炭素には電子が少ない。グルコース(C6H12O6)には炭素1個当たり酸素は1個なので、二酸化炭素の炭素よりたくさんの電子を持っている。つまり、炭素は還元された状態である。グルコースが解糖とクエン酸回路(問題文ではTCAサイクル)で酸化されるということは、つまり電子を放出するということだ。解糖とクエン酸回路で放出された電子をミトコンドリアまで運ぶやつがいる。これがNAD+FADだ。NAD+はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの略称だ。FADはフラビンアデニンジヌクレオチドの略称だ。詳しくは教科書をみよう。

④NAD+とFADの役割
 NAD+もFADも酸化還元反応を行う酵素の補酵素である。解糖とクエン酸回路の中の酸化還元反応によって基質が酸化されると、これらの補酵素は還元されて、それぞれNADHとFADH2になる。つまり、基質(解糖とクエン酸回路の中間体)が持っていた電子を受け取ったということだ。

⑤ATP合成のまとめ
 グルコース1分子が2分子のピルビン酸になる解糖で2分子のATPと2分子NADHができる。2分子のピルビン酸から2分子のアセチルCoAができるときに2分子のNADHができる。クエン酸回路では6分子のNADH、2分子のFADH2、2分子のGTPができる。NADH 1分子から3分子のATPが、FADH2 1分子から2分子のATPができる。ここで、クエン酸回路でGTPができることに注意しよう。これが、問題文aの高エネルギー化合物生成反応に相当する。GTPはATPに相当すると考える。よって、全体として38分子のATPが生成することになる。詳しくは教科書をみよう。

正解は、bとcが正しいので(4)
by kanri-kokushi | 2006-08-26 13:33 | 第17回国家試験 | Comments(0)