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生化学

17-102.ケトン体のひとつであるアセト酢酸の代謝についての記述である。正しいのはどれか。
(1)脂肪酸の分解が亢進している状況下では合成が抑制される。
(2)肝細胞のミトコンドリア内で合成され、血液中に放出される。
(3)肝細胞はこれをエネルギー源として利用できる。
(4)筋肉細胞はこれをエネルギー源として利用できない。
(5)これをエネルギー源として利用する代謝経路は解糖系である。

ケトン体についてやや詳しい知識が要求されている問題だ。結構難しいぞ。

①なぜケトン体が生成されるのか?
 脂肪酸がβ酸化により分解されるとアセチルCoAができる。アセチルCoAはクエン酸回路に入ってさらに酸化されて電子を放出し、その電子はNADHとFADH2によって電子伝達系に渡されてATP合成につながる。さて、教科書でクエン酸回路の図を見てほしい。アセチルCoAはオキサロ酢酸と結合してクエン酸になって、クエン酸回路に入るようになっているでしょう。ということは、脂肪酸を分解してできたアセチルCoAはオキサロ酢酸が不足するような状況ではクエン酸回路に入れず、ATP合成のエネルギー源にはなれないということだ。どんなときにオキサロ酢酸が不足するだろうか?例えば飢餓状態では血糖値が低下する。脂肪酸をエネルギー源として利用できないので、肝臓がグルコースを産生して脳に供給しなければならない。体内でグルコースを合成して血液中の放出できるのは肝臓だけだ。この時、オキサロ酢酸は糖新生の材料として消費される。糖尿病でインスリンが絶対的に不足したときも同じようなことが起こる。クエン酸回路に入れないアセチルCoAが増加するとどうなるか?2つのアセチルCoAが結合してアセトアセチルCoAになって、CoAを1つ放出する。こうしてアセチルCoAが蓄積したために細胞内で不足したCoAを回収して滞っていたβ酸化を進めることができる。アセトアセチルCoAはその後何段階かの反応を経てアセト酢酸3-ヒドロキシ酪酸アセトンになる。この3つの化合物を総称してケトン体という。よって、(1)は×。

②ケトン体はどこで合成されるか?
 いくつかの教科書をみたが、すべて肝臓のミトコンドリアで合成されると書いてあった。よって、(2)は○。

③肝臓で合成されたケトン体はどうなるか?
 肝臓のミトコンドリア内で合成されたケトン体は血液中に放出され、全身の臓器でエネルギー源として利用される。脳も飢餓状態ではグルコースだけでなくケトン体をエネルギー源として利用する。もちろん筋肉もケトン体をエネルギー源として利用する。アセト酢酸と3-ヒドロキシ酪酸は何段階かの反応でCoAを受け取ってアセチルCoAとなって、各臓器でクエン酸回路に入ってエネルギーを産生する。ケトン体が産生されるような状況では、肝臓ではアセチルCoAはクエン酸回路に入れないので、肝臓はケトン体をエネルギー源として利用できない。よって、(3)、(4)、(5)はすべて×。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2006-08-27 13:16 | 第17回国家試験 | Comments(0)