2006年 10月 10日
解剖生理学
(1)血漿たんぱく質は、アルブミンとフィブリノーゲンのみからなる。
(2)血液を赤色にしている色素たんぱく質は、ミオグロビンである。
(3)リンパ球の生産は、骨髄における細胞分化によるものに限られる。
(4)膿は、病原細菌などの異物を処理して死滅した白血球の残がいである。
(5)組織から集まったリンパ液には、血漿に比べて多量のたんぱく質が含まれている。
①血漿タンパク質の種類と機能は?
血漿タンパク質は、大きく分けてアルブミンとグロブリン分画に大別される。アルブミンは肝臓で合成されるタンパク質で血漿タンパク質の50~70%を占めている。アルブミンは血液の膠質浸透圧を維持する主要なタンパク質である。グロブリン分画は電気泳動法によりα1、α2、Β、γの4分画に分けられ、100種類以上のタンパク質が含まれている。よって(1)は×。
血漿タンパク質の主要な役割は膠質浸透圧の維持、pHの維持、輸送タンパク質、凝固と線溶、生体防御機能(免疫グロブリン・補体)などである。鉄はトランスフェリンと、銅はセルロプラスミンと、甲状腺ホルモンはサイロキシン結合タンパク質と、ビタミンAはレチノール結合タンパク質と、ビリルビンはアルブミンと結合して運搬される。このようなタンパク質を輸送タンパク質と呼ぶ。血漿タンパク質の多くは肝臓でつくられる。フィブリノーゲンは血液の凝固に関わるタンパク質である。
②血液の赤い色は?
これは簡単。血液の赤い色は赤血球に含まれるヘモグロビンである。よって、(2)は×。ミオグロビンは筋肉に含まれるヘムタンパク質である。酸素を全身に運ぶヘモグロビンは血管外に出ることができないので、筋肉のような酸素を大量に消費する組織では、ミオグロビンが酸素をバケツリレーのようにして、筋肉細胞内での酸素の拡散を助けている。
③リンパ球はどこで作られるか?
リンパ球は骨髄の造血幹細胞に由来し、骨髄で産生されるが、将来T細胞になる未熟なリンパ球は胸腺に移動して成熟する。よって、リンパ球の細胞分化は骨髄に限られるものではない。よって(3)は×。
④膿の正体は?
問題文のとおり、膿は体内に侵入してきた病原体を白血球の戦いの残骸である。この戦いの主役は好中球である。よって、(4)は○。
⑤リンパ液とは?
学生にはリンパ液がイメージし難いらしい。私たちの体は細胞でできている。体中の細胞へは血液によって酸素と栄養素が運ばれ、二酸化炭素と老廃物が運び去られる。さて、毛細血管と細胞の間には間質という広場がある。ここにはコラーゲンなど細胞外物質が存在している。ここには間質液という水分がある。血管から細胞への酸素や栄養素の移動は、血管から間質への水の移動によって起こる。毛細血管の壁は血漿タンパク質を通しにくいので、間質液のタンパク質濃度は血漿のタンパク質濃度より低い。この濃度差によって膠質浸透圧が発生する。
さて、動脈に近い部分の毛細血管から漏れ出た水は、静脈に近い部分の毛細血管に戻っていくのじゃ。しかし、間質液の一部は、リンパ管という管によって吸い上げられるのじゃ。この管の中にはリンパ球が流れていて、途中にはリンパ節というリンパ球がたくさん集まった場所もあるのじゃ。よってこの管のことをリンパ管というようになったのじゃ。そして、リンパ管の中を流れる液をリンパ液というようになったのじゃ。よって、リンパ液と間質液のタンパク質濃度は等しいのじゃ。よって、リンパ液には血漿に比べて多量のタンパク質が含まれているというのは×なのじゃ。
正解(4)