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生化学

16-104.ホルモンの受容体に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)甲状腺ホルモンの受容体は、細胞内に存在する。
(2)エピネフリン(アドレナリン)の受容体は、細胞内に存在する。
(3)インスリンの受容体は、細胞内に存在する。
(4)アルドステロンの受容体は、細胞膜に結合して存在する。
(5)コルチゾルの受容体は、細胞膜に結合して存在する。

①ホルモン受容体には大きく分けて2種類ある
 問題文にあるように、受容体は細胞膜に結合しているか、細胞内にあるか、によって2種類に分類できる。
 さて、その2つはどういう違いがあるのだろう。それを考える前に、受容体が2種類に分類されるということは、それに対応してホルモンも2種類に分類されるということだ。そろそろわかってきたかな?まだわからないかな?答えを言おう。ホルモンには水に溶けやすいものと、油に溶けやすいものの2種類がある。細胞は細胞膜で包まれているけど、その細胞膜は脂質二重層でできている。つまり、油に溶けやすい、ちゃんと表現すると脂溶性ホルモンは細胞膜を拡散により濃度勾配に従って通過することができるということだ。一方、水に溶けやすい、ちゃんと表現すると水溶性ホルモンは細胞膜を通過できないということだ。だから、水溶性ホルモンの受容体は細胞膜上にあり、脂溶性ホルモンの受容体は細胞内にある

②水溶性ホルモンと脂溶性ホルモン
 さて、次に考えることは、どのホルモンが水溶性で、どのホルモンが脂溶性かということだ。脂溶性ホルモンから考えよう。まず、ステロイドホルモンと呼ばれるもの。具体的には何かな?3つ4つすらすら答えてもらいたい。性線から分泌される男性ホルモン(テストステロン)、女性ホルモン(エストロゲン)、副腎皮質から分泌される糖質コルチコイド(コルチゾル)、電解質コルチコイド(アルドステロン)がこれにあたる。これらステロイドホルモンはコレステロールを材料に合成される。コレステロールは脂質だ。よって、水に溶けにくい。脂溶性ホルモンでもうひとつ知っておかなければならないのは甲状腺ホルモンだ。チロシンとヨードを材料に作られるが水にとけない。次に、水溶性ホルモン。これはたくさんある。下垂体、副腎髄質、膵臓ランゲルハンス島から分泌されるホルモンはすべて水溶性だ。化学的にはペプチドやアミンだ。成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インスリンなどはペプチドだ。副腎髄質ホルモンはアドレナリンとノルアドレナリンでチロシンを原料に作られるアミンだ。
 以上のことを踏まえて問題文を見ると、甲状腺ホルモン、アルドステロン、コルチゾルは脂溶性ホルモンなので受容体は細胞内に存在する。エピネフリン(アドレナリン)、インスリンは水溶性ホルモンなので受容体は細胞膜に存在する。よって(1)が正しい。

③ちょっと一言
 インスリン受容体のシグナル伝達を研究してきたものの立場から言わせてもらうと、「細胞膜に結合」という表現は受け入れられない。「結合」しているのではなく、「貫通」しているのだ。受容体は細胞外に露出した部分、細胞膜を貫通する部分、細胞内突き出た部分に分けることができる。水溶性ホルモンは細胞外に露出した部分に結合する。すると受容体の形が少し変形する。その変形が膜貫通部分を介して、細胞内に突き出た部分の形を少し変える。その結果、細胞内のシグナル伝達を担当する分子が受容体と相互作用を起こして活性化する。その結果、細胞内の標的タンパク質にシグナルが伝達され、ホルモンの作用が発揮される。

④ついでに、もう一言
 一般に細胞膜に存在する受容体の作用は、もともと細胞内に存在する標的タンパク質をリン酸化などにより活性化して作用を発揮する。よって作用発現に要する時間が短いことが多い(秒~分)。それに対して、細胞内に存在する受容体はDNAに結合して特定の遺伝子の発現を調節することにより作用を発揮するので、作用発現に少し時間がかかることが多い(時間~日)。すべてのホルモンにおいて、絶対にそうだというわけではないが・・・

正解は(1)
by kanri-kokushi | 2007-02-23 15:02 | 第16回国家試験 | Comments(0)