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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

21-21 血管系に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a 血管の中膜に含まれる筋肉組織は、横紋筋からなる。
b 血管内皮は、単層扁平上皮である。
c アンギオテンシンⅡには、血管を収縮させる作用がある。
d 肺静脈血の酸素飽和濃度は、肺動脈血よりも低い。
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

①血管(動脈、毛細血管、静脈)の構造
 動脈は内膜、中膜、外膜の三層構造でできている。血管の内面は一層の扁平な内皮細胞でおおわれている。この内皮細胞とその下の結合組織を内膜という。中膜は平滑筋層で、収縮あるいは拡張することにより血管の内腔を狭くしたり、広くしたりして血流を調節している。外膜は動脈の壁を包んでいる結合組織である。大動脈の結合組織は弾性線維を多く含み弾力があることから弾性血管と呼ばれる。毛細血管の手前の細動脈は平滑筋層が発達していて筋性動脈と呼ばれる。これは末梢血管抵抗を作り出すことから抵抗血管とも呼ばれる。
 毛細血管は内皮細胞と基底膜からなり、中膜と外膜は存在しない。静脈は動脈と同じ三層構造だが、平滑筋層が薄く、血管内腔に逆流を防ぐ弁があるのが特徴である。
 問題文にある筋肉の横紋は骨格筋あるいは心筋の筋肉組織で見られる。筋原線維を構成するアクチンとミオシンが規則正しく並んでいるのが縞模様として見えることから横紋筋と呼ばれる。平滑筋の収縮もアクチンとミオシンで行われるが、規則正しく並んでいないので横紋は見られない。

②血管の収縮と拡張は多くの因子により調節されている
1)自律神経
 全身の血管に分布する自律神経は原則として交感神経だけである。例外は唾液線、陰茎、陰核で、これらの臓器には交感神経と副交感神経が分布している。交感神経が緊張すると皮膚や内臓の血管は収縮するが、心臓の冠状血管と骨格筋の血管は拡張する。交感神経の末端からはノルアドレナリンが分泌されるが、その受容体にはα受容体Β受容体の2種類がある。ほんとはもっと細かい分類があるけど、ここでは、2種類としておこう。ノルアドレナリンがα受容体に結合すると血管は収縮し、Β受容体に結合すると血管は弛緩する。平滑筋がどちらの受容体を持つかで、同じ交感神経の緊張に対する反応が異なるということだ。
2)液性因子
 副腎髄質から分泌されるアドレナリン、レニン・アンギオテンシン系のアンギオテンシンⅡ、血小板から放出されるトロンボキサンA2、血管内皮細胞から分泌されるエンドセリンなどは血管を収縮させる液性因子である。同じく血管内皮細胞から分泌されるものでも一酸化窒素(NO)プロスタサイクリンは血管を拡張させる液性因子である。今日はこれ以上解説しないが、レニン・アンギオテンシン系は大事だから教科書で復習しておこう。

③肺循環
 中学生の理科の時間以来、繰り返し出題されてきた問題だ。心臓から遠ざかる方向に血液が流れる血管を動脈、心臓に血液を送り返す血管を静脈という。だから、心臓から肺へ行く血管を肺動脈、肺から心臓に帰ってくる血管を肺静脈という。これ以上解説は必要ないと思うが、当然肺から心臓へ帰ってくる血液の方が酸素飽和度は高い。

bとcが正しいので、正解は(4)
by kanri-kokushi | 2007-04-30 13:14 | 第21回国家試験 | Comments(0)