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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

21-24 代謝経路の調節に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)Ca2+イオンは、細胞内情報伝達に関与する。
(2)酵素の基質結合部位には、基質以外のリガンドは結合しない。
(3)異なる反応を触媒する酵素をアイソザイムという。
(4)プロテインキナーゼとは、たんぱく質分解酵素のことである。
(5)代謝経路の上流の中間体が下流の特定の酵素の活性を制御する仕組みを、フィードバック制御という。

①細胞内情報伝達って何のこと?
 体内の細胞はお互いに話し合っている。話し合い方には大きく2つあって、神経系と内分泌系がこれに相当する。ホルモンはある細胞から分泌されて別な細胞に働きかける。これは情報伝達という見方ができる。例えば血糖値が上昇するとインスリンが分泌され、インスリンは筋肉細胞や脂肪細胞でのグルコースの取り込みを増加させることにより血糖値をもとに戻す。このときインスリンは「血糖値が高い」という情報をΒ細胞から筋肉細胞や脂肪細胞の伝達したことになる。これを細胞外情報伝達という。別な言い方をすると「インスリンはファーストメッセンジャーである」となる。ホルモンは標的細胞の受容体に結合する。受容体はホルモンの情報を受け取ったわけだ。つまり受容体は郵便受けのようなものだ。受け取った情報は家の中に伝えなければ意味がない。この家の中の情報伝達が細胞内情報伝達だ。これを担う分子はたくさんある。サイクリックAMP、イノシトール3リン酸、ジアシルグリセロールなど小さな分子や、Gタンパク質、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼCなどの酵素も細胞内情報伝達に関与している。C2+イオンも重要な細胞内情報伝達を担っている。細胞内情報伝達の担い手を「セカンドメッセンジャー」という。

②リガンドって何のこと?
 酵素の基質結合部位とはつまり、酵素の触媒部位である。例えばプロテインキナーゼAの触媒部位には調節サブユニットが結合して酵素活性を抑制している。調節サブユニットのサイクリックAMPが結合すると、触媒部位から外れて、プロテインキナーゼAは活性化される。リガンドとは酵素や受容体に結合する物質のことを全部ひっくるめた総称である。基質、阻害薬、補酵素、活性調節因子、ホルモンなどが含まれる。

③アイソザイムって何のこと?
 「アイソ」は同じという意味。「ザイム」はエンザイム(酵素)のこと。つまり、アイソザイムとは同じ反応を触媒する酵素のこと。例えば、唾液線アミラーゼも膵臓アミラーゼもどちらもでんぷんを加水分解するが、アミノ酸配列は異なる別な酵素である。このような時に、「唾液線アミラーゼと膵臓アミラーゼはアイソザイムである」という。

④プロテインキナーゼって何のこと?
 「プロテイン」はタンパク質、「キナーゼ」はリン酸化酵素のこと。よって、「プロテインキナーゼ」はタンパク質をリン酸化する酵素のことである。タンパク質分解酵素は「プロテアーゼ」である。タンパク質のリン酸化/脱リン酸化はタンパク質の機能を調節する重要なメカニズムだ。例えばグリコーゲンの合成を分解に関わるグリコーゲン合成酵素ホスホリラーゼはリン酸/脱リン酸化で酵素活性が調節されている。詳しくは教科書を復習しよう。

⑤フードバック制御って何のこと?
 「フィードバック」は日本語に訳しにくいが、電子工学の分野で、「ある系の出力を、入力側に返環すること」の意味で使われる。ある代謝経路で考えると、「出力」に相当するものが下流の生成物だ。そして、「入力」を調節しているのが上流の律速酵素だ。下流の生成物が上流の律速酵素の活性を調節することをフィードバック制御という。ちなみに、下流の生成物が小さな分子で、律速酵素の基質結合部位とは異なる部位に結合して酵素活性を調節することを「アロステリック調節」という。

正解は(1)
by kanri-kokushi | 2007-05-05 16:46 | 第21回国家試験 | Comments(0)