人気ブログランキング | 話題のタグを見る

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

21-37 血圧の調節に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)延髄には、血圧調節の中枢がある。
(2)心臓への流入血液量が増えると、心収縮力が低下する。
(3)血圧上昇により圧受容器が興奮すると、心拍数が増加する。
(4)一酸化窒素(NO)は、血管収縮作用を有する。
(5)循環血液量が減少すると、レニンの分泌が低下する。

①血圧調節の中枢はどこにあるか?
 血圧は心拍出量と末梢血管抵抗によって決まる。ホースで庭に水をまくところを想像してみよう。水がホースの壁を押す圧力(血圧)は蛇口から出る水の量(心拍出量)とホースの先をつまむ力(末梢血管抵抗)で決まるでしょう。よって、血圧は心臓の収縮力と血管の収縮力で決まる。心臓の収縮力を決める中枢は延髄にある心臓抑制中枢と心臓促進中枢だ。心臓抑制中枢からの指令は迷走神経(副交感神経)によって心臓に伝えられ、収縮力を弱めると同時に、心拍数も減少させる。心臓促進中枢からの指令は交感神経によって心臓に伝えられ、収縮力を強めると同時に、心拍数も増加させる。血管の収縮力を決める中枢も延髄にあって、血管運動中枢という。血管運動中枢からの指令は例外(唾液線、陰茎、陰核)を除いて交感神経だけによって伝えられる。これを単独支配という。心臓は交感神経と副交感神経の二重支配である。

②圧受容器とは?
 大動脈弓と頚動脈洞には圧受容器(血液が血管の壁を押す圧力を感じ取る受容器)がある。血圧が上昇して圧受容器が刺激を受けると、その刺激は迷走神経(大動脈弓)を舌咽神経(頚動脈洞)の求心性線維によって心臓抑制中枢と血管運動中枢に伝えられ、その結果副交感神経の活動が活発になり、交感神経の活動が抑制されて、血圧は低下し、脈拍数も減少する。要するに負のフィードバック調節だね。

③血圧調節に関わる液性因子
(1)アドレナリン(副腎髄質):血圧を上昇させる。
(2)レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(腎臓、副腎皮質):血圧を上昇させる。
(3)カリクレイン・キニン系(腎臓):キニンは血管拡張作用、利尿作用を有し、血圧を低下させる。
(4)バソプレッシン(下垂体後葉):抗利尿ホルモンとも呼ばれ、集合管での水の再吸収を促進して体液量を増加せる。体液量が増加すれば、普通は循環血液量も増加するので心拍出量も増加する。血管収縮作用も有するので血圧を上昇させる
(5)心房性Na利尿ペプチド(右心房):右心房の拡張により分泌されるホルモンで、尿細管からのNa排泄を促進して循環血液量を減少させる。アンギオテンシンなど種々の昇圧因子に対する拮抗作用も有し、血圧を低下させる。
(6)トロンボキサンA2(血小板):血管収集作用がある。
(7)プロスタサイクリン(血管内皮細胞):血管拡張作用がある。
(8)ヒスタミン(肥満細胞):血管拡張作用がある。アレルギーで皮膚が赤くなるのは血管が拡張するからだ。
(9)一酸化窒素(血管内皮細胞):血管平滑筋を弛緩させ、血圧を低下させる。
 レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系については、これまで何度も説明してきたから、今日はこれ以上説明しないが、大事のなで教科書でよく復習しておこう。

④フランク-スターリングの法則
 拡張期に心室に流入する血液が多いほど、心収縮力が増強し、心拍出量が増加することをフランク-スターリングの法則という。静脈還流量と心拍出量を一致させるための自律的調節である。そうしないと静脈に血液が停滞する。そのような状態を心不全という。

正解は(1)
by kanri-kokushi | 2007-08-03 19:43 | 第21回国家試験 | Comments(0)