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臨床栄養学

21-138 肝硬変の非代償期の栄養補給に関する記述である。(  )に入る正しいものの組合せはどれか。
 肝硬変の非代償期ではフィッシャー比を( a )ために、( b )を投与する。
    a       b
(1)上げる - 芳香族アミノ酸
(2)上げる - 分枝アミノ酸
(3)上げる - 含硫アミノ酸
(4)下げる - 分枝アミノ酸
(5)下げる - 芳香族アミノ酸

①フィッシャー比(なぜトリプトファンが入ってないの?)
 まず、フィッシャー比とは何か?分枝アミノ酸と芳香族アミノ酸の比率をフィッシャー比という。分枝アミノ酸は側鎖が枝分かれしているもので、バリン、ロイシン、イソロイシンがある。芳香族アミノ酸は芳香族環をもつもので、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンがある。芳香族環とはベンゼン環など環状の不飽和化合物のことで、教科書によってはヒスチジン加えたものもある。さて、渡邉明治先生と沖田美佐子先生が書かれた「肝臓病と治療栄養」(第一出版)には「トリプトファンは化学構造の上からは芳香族アミノ酸であるが、栄養学領域では芳香族アミノ酸に加えない」と書いてあった。これがフィッシャー比の分母がフェニルアラニンとチロシンの2つになる理由だと思うが、なぜトリプトファンは仲間外れになったんだろう。誰か教えてください。

②非代償期には分枝アミノ酸の血中濃度が低下する
 分枝アミノ酸は主に筋肉に取り込まれて代謝される。血中分枝アミノ酸濃度が低下する理由として、肝硬変患者で増加しているアンモニアの処理に使われることや、門脈圧が亢進するためにインスリンが肝臓を通らずに大循環に入るために、筋肉でのアミノ酸の取り込みが増加することが考えられている。

③非代償期には芳香族アミノ酸の血中濃度が増加する
 血液中の芳香族アミノ酸は主に肝臓に取り込まれて代謝されるが、肝硬変ではそれが障害されるので血液中に停滞し、濃度が上昇する。

④非代償期には含硫アミノ酸の血中濃度も増加する
 含硫アミノ酸は硫黄(S)を含むアミノ酸でメチオニンとシステインがある。含硫アミノ酸も肝臓で代謝されることから、肝硬変では血中濃度が増加している。

⑤非代償期肝硬変の栄養補給
 栄養補給ということで足りないものを補給し、過剰なものを制限する。つまり、分枝アミノ酸を補給し、芳香族アミノ酸を制限する。最近、分枝アミノ酸製剤の投与により、肝硬変の重篤な合併症を抑制したり、肝癌の発症を抑制したりする可能性があることが大規模臨床試験で確かめられている。

正解は(2)
by kanri-kokushi | 2008-05-26 21:23 | 第21回国家試験 | Comments(0)