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臨床栄養学

21-146 骨疾患に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)骨粗鬆症では、血清カルシウム値が低下する。
(2)副甲状腺機能低下症は、骨粗鬆症発症の原因になる。
(3)ビタミンK摂取により、骨量は低下する。
(4)骨軟化症では、血清アルカリホスファターゼ活性が上昇する。
(5)腎性骨異栄養症では、副甲状腺ホルモンの血中濃度が低下する。

①老人性骨粗鬆症と閉経後骨粗鬆症
 一次性の骨粗鬆症には、大きく分けて老人性骨粗鬆症と閉経後骨粗鬆症の2種類がある。この2つは病態が全く違うので、よく整理しておこう。
 老人性骨粗鬆症では、加齢によりビタミンDなどホルモン産生が低下する。その結果、腸管からのCa吸収が低下し、血清Ca濃度が低下する。しかし、副甲状腺(上皮小体ともいう)からパラソルモン(副甲状腺ホルモンともいう)が分泌されて(二次性副甲状腺機能亢進症)、血清Ca濃度は基準範囲内に保たれる。
 閉経後骨粗鬆症では、まず、閉経によるエストロゲン不足のために破骨細胞の活動が活発になり、その結果、骨吸収が亢進して血清Ca濃度が上昇する。しかし、副甲状腺からのパラソルモン分泌が低下し(二次性副甲状腺機能低下症)、尿中へのCa排泄を増加させて、血清Ca濃度は基準範囲内に保たれる。

②副甲状腺機能低下症と亢進症
 副甲状腺からはパラソルモンが分泌される。パラソルモンは、血漿Ca濃度が低下すると分泌が増加する。パラソルモンは、骨の破骨細胞を活性化して骨吸収を促進し、血漿Ca濃度を上昇させる他、腎臓では、尿細管でのCa再吸収とP排泄を促進することにより血漿Ca濃度を上昇させ、1α水酸化酵素を誘導してビタミンDの活性化を促進する。つまり、パラソルモンは血清Ca濃度が低下しないように維持するホルモンである。副甲状腺機能亢進症では、パラソルモン分泌が増加するので骨吸収が増加して骨密度が減少し、高Ca血症になる。逆に、副甲状腺機能低下症では、パラソルモン分泌は減少しているので低Ca血症になるが、骨密度は低下しない。

③ビタミンKと骨形成
 ビタミンKはオステオカルシンを活性化して、骨形成を促進する。オステオカルシンは骨芽細胞が産生する非コラーゲン性骨基質タンパク質で、骨の石灰化を促進する。

④骨軟化症と血清アルカリホスファターゼ活性
 骨粗鬆症では、骨密度が減少するが(量的異常)、骨そのものに質的異常がないのが特徴である。一方、骨軟化症では量的異常に加えて、骨の石灰化障害という質的異常が加わる。血液検査においても低Ca血症、低P血症、血清アルカリホスファターゼ活性上昇がみられる。アルカリホスファターゼは肝臓、腎臓、小腸、骨などで産生され、血清アルカリホスファターゼの大部分は肝臓由来なので骨疾患に特異的な検査ではないが、骨軟化症では骨芽細胞による骨型アルカリホスファターゼ産生が増加するために全体の血清アルカリホスファターゼ活性は増加する。骨軟化症では骨密度が低下しているが、それを何とかしようとして骨芽細胞が頑張っていることを示す検査所見である。骨型アルカリホスファターゼは骨形成マーカーとして臨床検査で利用されている。

⑤腎性骨異栄養症
 これは、尿毒症患者で出現する特徴的骨病変を総称したものである。病態はビタミンD活性化不足による線維性骨炎と骨軟化症である。血清Ca濃度は低下するので、二次性副甲状腺機能亢進症をきたし、パラソルモンの血中濃度は上昇する。

正解は(4)
by kanri-kokushi | 2008-08-13 12:24 | 第21回国家試験 | Comments(0)