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臨床栄養学

21-147 胃切除後に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)巨赤芽球性貧血は、術直後に見られる合併症である。
(2)骨塩量減少の原因は、カルシウムの吸収不良である。
(3)早期ダンピング症候群の予防には、高糖質食を勧める。
(4)鉄吸収が促進される。
(5)胃酸分泌が過剰になる。

 胃切除後に起こることを考えるには、胃の役割を考えて、その役割が果たせなくなったことを考えればよい。胃の役割は、①食物を一時的に胃の中に蓄えて、少しずつ十二指腸に送ること、②胃液による食物の消化、の2つを考えればいい。

①胃の食物貯留能とダンピング症候群(早期と後期)
 ダンピング症候群は胃を切除した人が食事をした後に起こる症状の集まりである。食後20~30分に出現する早期ダンピング症候群と、2~3時間後に出現する後期ダンピング症候群に分けられる。
 早期ダンピング症候群は、胃の食物貯留能がなくなったために、食物が直接空腸に流入し、高浸透圧刺激と急激な腸管壁の拡張刺激により、神経内分泌反応が引き起こされることが原因である。腹部症状として、腹痛、悪心、嘔吐、腹鳴、下痢などが、全身症状として、動悸、発汗、冷や汗、めまい、呼吸困難、失神などが起こる。
 後期ダンピング症候群では、糖質の急速な吸収による高血糖(1時間以内)が起こり、その後インスリン過剰分泌による反応性低血糖が起こる。脱力感、めまい、冷や汗、動悸、手の震え、意識障害などの低血糖症状が出現する。
 ダンピング症候群が起こるメカニズムから考えて、予防は少量頻回食が基本であり、高糖質食を勧める理由はない。よって(3)は×。ちなみに、後期ダンピング症候群の予防は、少量頻回食に加えて、糖質の摂取を控えることである。

②胃液の欠乏による術後栄養障害
 胃切除後の胃液の欠乏によりいろいろな栄養障害が起こる。胃液の欠乏は、胃液による消化だけでなく、膵液分泌低下の原因となり、全般的な消化・吸収障害をもたらす。よって、(5)は×。
 まず、胃酸の不足により、Fe3+からFe2+への還元が低下するため、鉄の可溶性が低下して、鉄の吸収が低下するために鉄欠乏性貧血が出現する。よって(4)は×。
 胃酸の不足は、Ca2+の溶解性も低下させるので、Ca2+の吸収障害が起こり、骨粗鬆症や骨軟化症の原因となる。膵液分泌障害のために、脂肪の消化吸収障害が起こり、そのため脂溶性ビタミンであるビタミンDの吸収障害が起こるものCa2+の吸収障害の原因となる。よって(2)は○。
 壁細胞から分泌されるキャッスルの内因子の不足により、ビタミンB12の吸収障害が起こり、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)が出現する。しかし、ビタミンB12は肝臓に3~6年分貯蔵されているので、術後数年して出現する。よって(1)は×。

正解は(2)
by kanri-kokushi | 2008-08-14 18:00 | 第21回国家試験 | Comments(0)