2023年 07月 07日
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
37-42 感染症に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)宿主は、感染症の原因となる微生物である。
(2)潜伏期は、症状が改善した後でも病原体が残存している期間である。
(3)不顕性感染とは、感染しでも症状が現れない感染をいう。
(4)結核は、新興感染症である。 (再興感染症)
(5)再興感染症とは、同一患者に繰り返し発症する感染症をいう。
×(1)宿主は、微生物が感染を起こす生物である。
×(2)潜伏期は、感染が成立した後、発症するまでの期間である。
○(3)不顕性感染とは、感染しでも症状が現れない感染をいう。
感染とは、病原体(微生物)が宿主の体内に侵入して、定着、増殖することである。
感染症とは、感染により発熱や痛みなど自覚的・他覚的な症状が出現するような病的な状態である。
感染が成立しても直ちに感染症を発症するわけではない。感染症の症状の多くは感染した微生物を排除するための免疫反応によって起こる。免疫反応による炎症が起こるまでは、基本的には無症状である。この無症状の期間(潜伏期)は感染症によって長いものと短いものがある。
感染は成立したが、発症することなく微生物を排除できた場合は不顕性感染となる。これに対し発症したものは顕性感染という。
×(4)結核は、再興感染症である。
×(5)再興感染症とは、同一患者に繰り返し発症する感染症をいう。
新興感染症の定義は、「かつては知られていなかった、この20年間に新しく認識された感染症で、局地的に、あるいは国際的に公衆衛生上の問題となる感染症」(WHO、1990年)である。例として、新型コロナウイルス(COVID-19)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、後天性免疫不全症候群(HIV)、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、腸管出血性大腸菌感染症、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)感染症などがある。
再興感染症とは、かつて流行していたが、抗生物質の利用や公衆衛生の改善により、発症者の数が一時期は減少していたが、最近になって再び発症者が増加し、注目されるようになった感染症である。例として、結核、マラリア、デング熱、狂犬病、黄色ブドウ球菌感染症などがある。
正解(3)
2023年 07月 07日
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
37-41 食物アレルギーに関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)Ⅱ型アレルギーによって発症する。
(2)乳糖不耐症は、食物アレルギーである。
(3)口腔アレルギー症候群は、食物アレルギーの特殊型である。
(4)食物経口負荷試験は、自宅で行う。
(5)アナフィラキシーショックでは、抗ヒスタミン薬の投与が第一選択である。
×(1)Ⅰ型とⅣ型アレルギーが発症に関与する。
食物アレルギーは食品に含まれるアレルゲンによって引き起こされるアレルギーである。IgEによるⅠ型アレルギーと細胞性免疫によるⅣ型アレルギーが発症に関与する。3大アレルゲンは、卵(特に卵白)、牛乳、小麦である。
×(2)乳糖不耐症は、ラクターゼの不足によって起こる。
乳糖不耐症は、牛乳に含まれる二糖類である乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼの不足によって下痢や腹痛などの消化器症状を引き起こす疾患であり、アレルギー疾患ではない。下痢は乳糖の消化障害による浸透圧性下痢である。
○(3)口腔アレルギー症候群は、食物アレルギーの特殊型である。
口腔アレルギー症候群とは、多種の果物や野菜により口腔粘膜にかゆみや刺激を感じる疾患である。原因は、花粉の抗原と野菜・果物の抗原の交差抗原性であることから花粉・食物アレルギー症候群ともいう。花粉アレルギーの人が産生しているIgEが野菜・果物の抗原と交差反応を起こすことで口腔内の粘膜にアレルギー反応を起こす。
×(4)食物経口負荷試験は、病院で行う。
アナフィラキシーショックをおこす可能性があるので、病院において専門の医療スタッフの監視下で慎重に実施する。
×(5)アナフィラキシーショックでは、アドレナリンの投与が第一選択である。
アドレナリンは、末梢血管の収縮と血管透過性亢進の阻止により、浮腫による呼吸困難を軽減し、血圧を安定化させる。
抗ヒスタミン薬は、掻痒感などの症状の緩和に使用する。
正解(3)
2023年 07月 03日
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
37-40 免疫及びアレルギーに関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)抗体は、マクロファージにより産生される。
(2)分泌型IgAは、消化管の免疫を担う。
(3)自己免疫性溶血性貧血は、I型アレルギーの機序で起こる。
(4)ツベルクリン反応は、Ⅲ型アレルギーの機序で起こる。
(5)アナフィラキシーショックは、Ⅳ型アレルギーにより発症する。
×(1)抗体は、形質細胞により産生される。
抗体は、B細胞が分化した形質細胞が産生・分泌する。
○(2)分泌型IgAは、消化管の免疫を担う。
IgAは唾液や腸液に含まれている。
×(3)自己免疫性溶血性貧血は、Ⅱ型アレルギーの機序で起こる。
Ⅱ型アレルギーは、細胞や組織に対する自己抗体の産生に補体が関与して組織傷害を起こすアレルギーである。自己免疫性溶血性貧血は、赤血球に対する自己抗体が産生されて赤血球の破壊が亢進することにより発症する貧血なのでⅡ型アレルギーである。
×(4)ツベルクリン反応は、Ⅳ型アレルギーの機序で起こる。
Ⅳ型アレルギーは、細胞傷害性Tリンパ球が関与する細胞性免疫である。抗体よってすぐに対応する液性免疫に比べて、反応が表れるまでに時間がかかる。ツベルクリン反応は、結核菌抽出物の皮下注射し、発赤、浮腫、かゆみなどの有無を判定する検査である。反応は細胞性免疫であることから、注射後36時間から48時間でピークに達し、数日続く。判定は2日後に行う。
×(5)アナフィラキシーショックは、Ⅰ型アレルギーにより発症する。
Ⅰ型アレルギーは、IgEが関与するアレルギーである。
アナフィラキシーは、アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過敏反応である。これに血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックという。
免疫学的機序によるアナフィラキシーにはIgEが関与するものと、関与しないものがある。IgEが関与するものでは、特異的IgE抗体が結合するマスト細胞から化学伝達物質が放出され、毛細血管拡張、透過性亢進、気道平滑筋収縮、気道分泌促進、粘膜浮腫などを引き起こす。原因として食物アレルギーが多い。IgEが関与しないものでは、免疫複合体による補体(C3~C5)の活性化により産生されるアナフィラトキシンがマスト細胞を刺激して化学伝達物質を放出する。原因として血液製剤に対するアナフィラキシーがある。
この他に非免疫学的機序によるもので、運動、日光、寒冷刺激、薬剤(造影剤、オピオイド)などが直接マスト細胞を活性化して化学伝達物質を放出するアナフィラキシーがある。
正解(2)
2023年 07月 03日
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
37-39 25歳、女性。易疲労感があり来院した。血液検査結果でWBC 1,060/μL、RBC 186万/μL、Hb 5.8g/dL、血小板8万/μL、網赤血球1%(基準値2~27%。)、MCV 91.3fL(基準値80~98fL)、MCH 31.1pg(基準値28~32pg)、MCHC 34.1%(基準値30~ 36%)、Cr O.6mg/dL、総ビリルピン0.3mg/dLであった。考えられる疾患として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
(1)鉄欠乏性貧血
(2)ビタミンB12欠乏性貧血
(3)再生不良性貧血
(4)溶血性貧血
×(1)鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血では小球性低色素性貧血になるが、症例はMCV、MCH、MCHCが基準範囲なので正球性正色素性貧血なので否定される。
MCVは、平均赤血球容積(Ht÷RBC×10fl)で、赤血球1個あたりの容積を表す。
MCHは、平均赤血球ヘモグロビン量(Hb÷RBC×10pg)で、赤血球1個あたりのヘモグロビン量を表す。
MCHCは、平均赤血球ヘモグロビン濃度(Hb÷Ht×100%)で、赤血球中のヘモグロビン濃度を%表す。
×(2)ビタミンB12欠乏性貧血
ビタミンB12欠乏症では大球性貧血になるので否定される。
○(3)再生不良性貧血
赤血球、白血球、血小板のすべてが減少する汎血球減少症であること、正球性正色素性性貧血であること、クレアチニン(Cr)と総ビリルビンが基準範囲にあることは、再生不良性貧血でみられる所見に矛盾しない。
×(4)溶血性貧血
溶血性貧血では、赤血球の破壊が亢進してビリルビンの産生が増加するが総ビリルビンが基準範囲であること、骨髄での赤血球産生の増加により網赤血球が増加するが基準範囲にあることから否定される。
正解(3)
2023年 07月 03日
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
37-38 血液系に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)末梢血中の赤血球は、核を持つ。
(2)好中球は、抗体を産生する。
(3)単球が血管外へ遊走すると、形質細胞となる。
(4)フィブリンは、トロンビンによりフィブリノーゲンに変換される。
(5)PAI-1は、脂肪細胞で産生される。
×(1)末梢血中の赤血球は、核を持たない。
骨髄の中で成熟した赤芽球は、脱核により核を細胞外に放出して網赤血球となり末梢血に出る。さらにミトコンドリアなどの細胞小器官を失って成熟赤血球となる。
×(2)形質細胞は、抗体を産生する。
抗体は、B細胞が分化した形質細胞が産生・分泌する。
×(3)単球が血管外へ遊走すると、マクロファージとなる。
×(4)フィブリノーゲンは、トロンビンによりフィブリンに変換される。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体である。フィブリンは、重合して網状のフィブリン網を形成し、血小板と硬く結びついて強固な血栓(二次血栓)を形成する。
○(5)PAI-1は、脂肪細胞で産生される。
PAI-1は、plasminogen activator inhibitor-1の略称である。プラスミノーゲンはプラスミンの前駆体である。プラスミノーゲンは、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA, tissue-plasminogen activator)によりプラスミンに変換される。プラスミンはフィブリンを分解することで血栓を溶解する。PAI-1は、t-PAを阻害することで血栓の溶解を抑制するので血栓ができやすくなる。
PAI-1は、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの1種であり、肥満では分泌が増加する。
正解(5)