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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

23-46 貧血とその成因・徴候に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。

a 鉄欠乏性貧血-----------------匙状爪(スプーンネイル)
b 腎性貧血---------------------エリスロポエチン産生増加
c 再生不良性貧血---------------知覚障害
d 遺伝性球状赤血球症-----------血中ビリルビン増加
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

a○ 鉄はヘモグロビンの構成成分で、酸素の運搬に必須である。何らかの原因で体内の鉄が不足するとヘモグロビンの合成が障害される。その結果、赤血球中のヘモグロビンの量が少なくなる。その結果、赤血球も小さくなる。鉄欠乏性貧血は小球性低色素性貧血の代表だ。鉄は、ヘモグロビンだけでなく、すべての細胞の機能に必要な栄養素である。鉄の不足はすべての細胞に障害をもたらす可能性がある。細胞の増殖が活発で、需要が大きい組織ほど、鉄欠乏の影響は出やすい。もっとも影響が出やすい細胞は赤血球だ。その他、爪、舌、口腔、咽頭、胃などの上皮細胞に影響が出やすい。爪の形成不全で、爪がスプーン状になるものを匙状爪(スプーンネイル)といって、鉄欠乏性貧血の特徴的な症状である。ちなみに、口腔や咽頭の粘膜の異常で嚥下障害が起こった場合をプランマー・ビンソン症候群という。

b× 腎臓の内分泌機能として、レニン、エリスロポイエチン、ビタミンD活性化の3つは必ず覚えておこう。エリスロポイエチンは、腎臓への酸素の供給が低下したときに分泌されて、骨髄の細胞に働いて、赤血球の数を増やす作用がある。腎不全では、腎臓の内分泌機能に異常が出現する。レニンは、分泌が増加して高血圧をもたらす。エリスロポイエチンは、分泌が減少して貧血をもたらす。これを腎性貧血といい、鉄を投与しても貧血は改善しない。ビタミンDは、活性化が障害されるので骨粗鬆症や骨軟化症が出現する。

c× 再生不良性貧血とは、何らかの原因で、骨髄での造血が著しく減少して、血液中のすべての血球細胞が減少する病気である。症状は、赤血球減少による貧血症状、白血球減少により感染症、血小板減少による出血である。知覚障害とは関係しない。知覚障害を起こす貧血としては、悪性貧血を覚えておこう。ビタミンB12が欠乏すると、骨髄内での赤芽球の分裂が障害され、巨赤芽球が出現する。悪性貧血は大球性貧血の代表である。ビタミンB12はメチオニン合成にもかかわっているので、ビタミンB12欠乏ではメチオニン不足になり、これが神経症状(知覚障害や運動障害)を起こすと考えられている。もし、治療せずに放置すると、半年くらいで死んでしまうところが「悪性」だ。「悪性腫瘍」とは関係ない。ちなみに、葉酸欠乏も巨赤芽球性貧血を起こすが、神経症状は出現しないことが特徴だ。

d○ 正常な赤血球は、真中がへこんだ円盤状の形をしている。遺伝性球状赤血球症は、赤血球の細胞骨格を構成するタンパク質の遺伝子の異常によって、赤血球が球状になったものだ。球状の赤血球は変形能が乏しく、脾臓の毛細血管に引っかかり、マクロファージに食べられてしまう。こうして溶血性貧血が出現する。赤血球の溶血が進むと、ヘモグロビンが壊される。ヘモグロビンのうち、タンパク質であるグロビンと鉄は再利用される。鉄と結合していた環状構造のポルフィリンは、開環してビリルビンになる。ビリルビンはアルブミンに結合して脾臓から肝臓に運ばれるので、血中ビリルビン濃度は上昇する。ちなみに、溶血性貧血で上昇する血中ビリルビンは、非抱合型ビリルビン(不溶性)である。肝炎や胆石症で増加する血中ビリルビンは、抱合型ビリルビン(水溶性)である。もうひとつ、ちなみに、ビリルビンは肝臓でグルクロン酸と結合して抱合型ビリルビンとなり、胆汁中に排泄されて小腸の腸内細菌によりウロビリノーゲンとなる。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2009-08-27 16:56 | 第23回国家試験 | Comments(0)