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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

22-24 生体エネルギーに関する記述である。正しいのはどれか。

(1)AMPは、高エネルギーリン酸結合を持つ。
(2)電子の受容は酸化と呼ばれる。
(3)酸化的リン酸化によるATPの合成は、細胞質ゾルで進行する。
(4)ホスホクレアチン(クレアチンリン酸)の高エネルギー結合は、ATP生成に利用される。
(5)電子伝達系を伝達される電子は、最終的に水素に移る。

(1)× リン酸(H3PO4)は、リン(P)の周りに酸素(O)が4つも結合している。酸素はたくさんの電子を抱え込む性質があるので、負に帯電している。そんな酸素を4つも持っているリン酸は、強く負に帯電している。そんなリン酸が2つ結合すると、お互いに反発しあう。それを無理やり結合させているのがリン酸結合である。リン酸結合は、水酸基と水酸基から水が取れてできるエステル結合である。エステル結合が加水分解されるとき、大きなエネルギーが放出される。このような結合を高エネルギーリン酸結合という。AMPはリン酸が1つなので、高エネルギーリン酸結合はない。ADPとATPは、高エネルギーリン酸結合をもつ。

(2)× 酸化還元の定義。酸素と結合することが酸化。酸素を奪われることが還元。酸素は、電子を抱え込む性質があることから考えると、電子を奪われることが酸化。電子を受け取ることが還元。炭素に酸素が結合すると、炭素が持っていた電子が酸素に奪われるので、「炭素は酸化された」といことになる。

(3)× 糖質に含まれる炭素は、電子をたくさん抱えている。つまり糖質に含まれる炭素は還元された状態で、多くのエネルギーを蓄えている。このエネルギーは太陽の光からやってきたもので、植物が光合成により蓄えたものだ。この炭素は、解糖、クエン酸回路、電子伝達系を経て、二酸化炭素に酸化される。このとき炭素から電子が放出される。電子は最終的には酸素に渡されて水ができる。ミトコンドリアの内膜で進行する電子伝達系で放出されるエネルギーを使って、水素イオンが内膜と外膜の間に汲み出される。この水素イオンの濃度勾配を利用してADPからATPが合成される。炭素の酸化と共役してADPをリン酸化してATPを合成するので酸化的リン酸化という。この過程は、ミトコンドリア内で進行する。

(4)○ クレアチンキナーゼという酵素は、細胞内にATPが十分にあるときは、ATPのリン酸1つをクレアチンに転移して、ホスホクレアチン(クレアチンリン酸)を生成する。クレアチンとリン酸の結合は高エネルギー結合である。全力で走り出した直後で、筋肉で大量にATPが消費されているが、糖質の酸化によるATP合成が間に合わないときは、クレアチニンキナーゼは、ホスホクレアチンのリン酸をADPに転移して、ATPを合成する。1段階の化学反応でATPを合成できるので、とっさの場合に、短時間しのぐのに便利な化学反応である。

(5)× 電子伝達系の電子は、最終的には酸素に渡され、水ができる。酸素が還元されて水ができるまでの中間体(スーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル)が活性酸素である。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2009-09-08 16:29 | 第22回国家試験 | Comments(0)