人気ブログランキング | 話題のタグを見る

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

24-28 代謝とその調節に関する記述である。正しいのはどれか。

(1)アクアポリン(水チャンネル)は、ATPを加水分解する酵素である。
(2)クエン酸回路には、基質と酸素分子との反応過程がある。
(3)アンギオテンシン変換酵素は、アンギオテンシンⅠをアンギオテンシノーゲンに変換する。
(4)脱共役たんぱく質(UCP)は、電子伝達とATP合成を脱共役させる。
(5)ホスホジエステラーゼは、ATPを基質としてcAMP(環状AMP)を合成する。

(1)× アクアポリンは、腎臓の集合管の上皮細胞に存在するタンパク質である。腎臓の集合管では、集合間の内腔に比べて集合間周囲の間質の浸透圧が高いために水が再吸収され、尿が濃縮される。水は細胞膜を自由に通過することができるが、移動の効率はあまりよくない。そこで、集合管のように大量の水が通過する細胞には、水の通り道になるタンパク質(アクアポリン)が存在する。集合管上皮が、下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(バソプレシン)に刺激されると、細胞内にあったアクアポリンが細胞膜に移動して、水の吸収速度を上げる。この過程にはATPは必要ない。

(2)× クエン酸回路には、酸素分子が入り込む場所はない。教科書の図で確かめておこう。

(3)× アンギオテンシン変換酵素は、アンギオテンシンⅠをアンギオテンシンⅡに変換する。

(4)〇 ミトコンドリアにおいて、電子伝達系で電子が移動する間に、マトリックスの水素イオン(H+)が内膜と外膜に挟まれた空間にくみ出される。このH+が、ATP合成酵素を通ってマトリックスに流れ込んでくるときに放出されるエネルギーによってATPが合成される。脱共役タンパク質(UCP、uncoupling protein)は、内膜と外膜の間にあるH+を、ATP合成酵素を通さずに、マトリックスに戻す。この時に放出されるエネルギーは熱に変換される。脱共役とは、H+の移動とATP合成がカップリングしないようにするという意味である。UCPは、褐色脂肪細胞に多く存在し、体温調節に関わっている。

(5)× ホスホジエステラーゼは、cAMPを基質として、AMPを生成する。つまり、セカンドメッセンジャーであるcAMPを分解して、ホルモンの作用を終了させる酵素である。ある種のホスホジエステラーゼは、cGMPを分解して、GMPを生成する。一酸化窒素(NO)は血管を拡張させる作用があるが、そのセカンドメッセンジャーはcGMPである。よってそのホスホジエステラーゼの阻害薬は、cGMPの分解を抑制するので、NOの血管拡張作用を持続させることになる。この作用を応用した薬がバイアグラである。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2011-01-13 19:26 | 第24回国家試験 | Comments(0)