人気ブログランキング | 話題のタグを見る

解剖生理学

19-83.心臓に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)左心房と右心房の間の房室弁を三尖弁と呼ぶ。
(2)左右2本の冠動脈はともに大動脈弓より分岐する。
(3)心電図のP波は左右の心房筋の脱分極で生じる。
(4)刺激伝導系のヒス束は洞房結節と房室結節(田原の結節)の間に存在する。
(5)心房性ナトリウム利尿ペプチドは血圧を上昇させる。

(1)心臓には4つの部屋がある。血液は大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈の順に流れることは中学生でも知っている。逆流を防ぐための弁が、①右心房と右心室の間、②右心室と肺動脈の間、③左心房と左心室の間、④左心室と大動脈の間の4ヵ所にあってそれぞれ名前がついている。名前は覚えなければ仕方がない。考えても答えは出てこない。①が「三尖弁」、②が「肺動脈弁」、③が「僧帽弁」、④が「大動脈弁」だ。ちなみに、僧帽弁は2枚の弁で構成され、三尖弁、肺動脈弁、大動脈弁は3枚の弁からなる。さらに、肺動脈弁と大動脈弁を構成する弁を「半月弁」ともいう。
(2)心臓から出た大動脈は、まず上行大動脈となって上行し、続いて大動脈弓となってUターンし、胸部大動脈となって下降する。冠動脈は大動脈弁のすぐ上、上行大動脈の基部から分岐して心臓に分布する。
(3)(4)心臓の収縮は特殊心筋による刺激伝導系によって引き起こされる。大事なことは刺激伝導系は特殊な心臓の筋肉でできていることで、神経細胞ではないということだ。心筋細胞はどれも自発的に収縮する性質を持っているが、右心房にある洞房結節の心筋細胞がもっとも早く収縮することから、心臓全体のペースメーカーになっている。洞房結節の刺激は左右の心房を収縮させつつ、房室結節田原の結節)に伝えられる。続いて、ヒス束→左右の脚→プルキンエ線維→固有心筋と伝えられる。心電図の針は心筋の脱分極が起こるときに上に振れたり、下に振れたりして波形が現れる。心房筋の脱分極によって現れる波形をP波という。ちなみに心室筋の脱分極によって現れる波形をQ波、R波、S波などいう。(QRS群と一括することもある)。心室筋の再分極によって現れる波形をT波という。
(5)心房性ナトリウム利尿ペプチドは、右心房に帰ってくる血液が増加して壁が引き伸ばされたときに、右心房から分泌されるホルモンだ。このホルモンは腎臓の集合管に働いてナトリウムの排泄を促進する作用がある。ナトリウムの排泄が促進されれば、体内のナトリウム量は減少し、浸透圧の関係で体液量も減少する。体液量が減少すれば循環血液量が減少する。循環血液量が減少すれば心拍出量が減少する。心拍出量が減少すれば血圧が低下する。まさに、風が吹けば桶屋が儲かる状態だ。

よって、正解は(3)だ。
by kanri-kokushi | 2005-10-18 17:34 | 第19回国家試験 | Comments(0)