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解剖生理学

19-84.血液に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)赤血球が骨髄で作られてからの寿命は約10ヶ月である。
(2)エリスロポイエチンは低酸素環境下で高値を示す。
(3)ABO式血液型でA型の人の血清中には抗A凝集素が存在する。
(4)プラスミンはフィブリノーゲンをフィブリンに変換する。
(5)血液に凝固防止剤を入れて遠心分離すると血清と血球に分かれる。

(1)赤血球は骨髄で作られることは知っているよね。赤血球が骨髄の中で増殖・分化している間は核があるんだ。でも、成熟して骨髄から出るときは脱核して、核を持たない中央がへこんだ円盤状の赤血球になるんだ。核だけじゃなくミトコンドリアやリボゾームも捨ててしまうんだ。だから、血液中に出てきた赤血球は新しいタンパク質を作ることができないので、どんどん老化してしまうんだ。赤血球は細い毛細血管の中を変形しながら流れるんだけれど、古くなった赤血球は硬くなって通過できなくなる。このような老化した赤血球は脾臓で取り込まれて破壊されるんだ。血液中に出てきた赤血球が脾臓で取り込まれるまでの寿命は120日、約4ヶ月であることを覚えておこう。
(2)エリスロポイエチンは腎臓から分泌されるホルモンで骨髄に働いて赤血球の産生を促進する。腎臓に十分な酸素が供給されないときにエリスロポイエチンの分泌は増加する。例えば、腎臓の血流が減少するときとか、血流は維持されているけれど、貧血のために十分な酸素が運ばれてこないときなどだ。低酸素環境下では当然腎臓に供給される酸素が少なくなるのでエリスロポイエチン分泌は増加して、血中濃度は高くなる。アスリートが高地トレーニングをするのは、低酸素環境下で赤血球数を増やすことを目的にしているんだ。
(3)A型の人が抗A凝集素を持っていたら血液が凝集しちゃうよね。ありえない話だ。正しくは、A型の人は抗B凝集素を、B型の人は抗A凝集素を、O型の人は抗A凝集素と抗A凝集素の両方を持っている。AB型の人はどちらの凝集素も持っていないぞ。
(4)フィブリノーゲンをフィブリンに変換するのはトロンビンだ。できたフィブリンは重合して血液を凝固させる。血小板がレンガだとするとフィブリンはレンガの隙間を埋めるセメントだと思えばわかりやすい。「歯肉からの出血はプラスミンのせいだった。デンターライオン」でおなじみのプラスミンはフィブリンを溶解して血栓を溶かす役割がある。歯肉の場合、プラスミンが働きすぎると出血しやすくなるので、それを抑える成分を歯磨きの中に混ぜ込んでいるんだ。体内ではトロンビンとプラスミンがバランスよく働くことが重要だ。
(5)血清血漿の違いがわかっていればなんということはない問題だ。血液は血管の外に出ると凝固する。だから、血液に含まれているフィブリノーゲンなど凝固因子は消費され、血餅と一緒に沈殿する。その残りが血清だ。凝固防止剤(EDTA、ヘパリンなど)があると血液は凝固しない。このような血液を遠心分離で血球を除いた残りを血漿という。血漿にはフィブリノーゲンなどの凝固因子が消費されずに残っている。

正解は(2)だ。
by kanri-kokushi | 2005-10-20 15:11 | 第19回国家試験 | Comments(0)