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解剖生理学

19-86.腎臓の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)右腎臓の方が左腎臓より位置的に高い。
(2)腎小体のボウマン嚢はメサンギウム細胞から成り立っている。
(3)健常人の糸球体では1日に約20mLの原尿が作られる。
(4)腎臓はビタミンDを活性型にする。
(5)アルドステロンはヘンレ係蹄に作用してナトリウムの再吸収を促進する。

(1)左右の腎臓の高さの問題はこれまでに3回も出題されているが、右の腎臓は肝臓があるためにやや低い位置になっていると覚えておけばよい。
(2)腎小体は糸球体とそれを包むボウマン嚢からなる。腎小体をマルピギー小体と呼ぶこともあるぞ。ボウマン嚢の上皮は尿細管の上皮の続きで、1層の扁平上皮でできている。この上皮は糸球体の基部で翻転して糸球体の毛細血管を包むタコ足細胞被蓋細胞)に移行する。
さて、問題はメサンギウム細胞だ。これはちょっとだけ細かい知識が必要だ。糸球体の毛細血管の内皮細胞とタコ足細胞の間には薄い基底膜が存在する。この基底膜によって血液は濾過される。糸球体の一部には毛細血管側の基底膜とタコ足細胞側の基底膜の間に結合組織が存在する部分がある。この結合組織の部分をメサンギウムという。メサンギウムに存在する細胞をメサンギウム細胞というんだ。
(3)具体的な数値を示して正しいかどうか聞かれると、とたんに自信がなくなるでしょう。いくつか腎臓の機能に関する数字を覚えなくちゃいけないが、丸覚えではすぐに忘れてしまいそうだ。覚えやすい数字から順に考えていけばいいようにすればいいぞ。まず1日の尿量から覚えよう。これは大体1.5Lだ。これはわかるよね。じゃあ、次に糸球体濾過値(GFR)を覚えよう。これは大体100mL/minだ。これもきりがいいから覚えやすいよね。単位も大事だぞ。さて、問題の原尿だが、これは糸球体で濾過された直後の、ボウマン嚢の中にある尿のことだ。「1日に原尿がどれくらい作られるか?」ということだが、これは「1日に糸球体でどれくらい濾過されるか?」というのと同じ意味だ。だから、1日の糸球体濾過量を求めればよい。よって、100×60×24÷1000=144Lで約150Lになる。もうひとつの覚え方だが、糸球体で濾過された水分の99%が再吸収され、1%が尿として排泄されることを知っていれば、1日の尿量の100倍が1日に作られる原尿の量ということで、これも約150Lになるぞ。
(4)腎臓は尿を作るところだということはみんな知っているけど、ホルモンを分泌する内分泌機能を持っていることは案外知らない人が多い。腎臓が分泌するホルモンを3つ覚えておこう。レニンエリスロポイエチンビタミンDだ。いずれも古典的な意味でのホルモンの範疇には入らないが、広い意味でホルモンと見なすことができる。さて、ビタミンDだが、食物から摂取することもできるし、体内で作り出すこともできる。いずれの場合でも、ビタミンDの活性化には肝臓と腎臓が必要だ。肝臓と腎臓にある水酸化酵素により1位と25位の炭素に水酸基(OH)がついて活性型になるんだ。
(5)レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系は、腎臓の機能だけでなく、循環系の調節、体液量の調節、血圧の調節など多くの場面ででてくるので、もう一度教科書をよく読んで、必ず理解しておこう。アルドステロンが作用する部位は遠位曲尿細管から集合管へ移行する部位と皮質集合管である。そこで、Naの再吸収とKの排泄を促進する。

正解は(4)だ。
by kanri-kokushi | 2005-10-25 17:02 | 第19回国家試験 | Comments(0)