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臨床栄養学

25-140 腹膜透析患者の食事療法に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)総エネルギー摂取量は、30㎉/㎏標準体重/日とする。
(2)たんぱく質は、0.6ℊ/㎏標準体重/日とする。
(3)カリウムは、800㎎/日以下とする。
(4)水分は、前日尿量に500㎖を加えた量とする。
(5)カルシウムは、300㎎/日以下とする。

腎臓病の食事ガイドラインは、見直しが多く、数値もコロコロ変わるので、国家試験で出題する際には、どのガイドラインによる出題なのか明示してもらいたいものだ。

(1)〇 1998年の「腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン」(日本腎臓学会)では、透析液からの腹膜吸収分も含めて29~34㎉/㎏標準体重/日であり、「エネルギー摂取量は肥満者では減らし、栄養障害者では増やす」という(注)がついていた。同じく日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版」では、27~39㎉/㎏標準体重/日になり、「厚生労働省策定の『日本人の食事摂取基準(2005年版)』と同一とする。性別、年齢、身体活動レベルにより推定エネルギー必要量は異なる。透析液からの吸収エネルギー分を差し引く」という(注)がついた。「2009年版日本透析医学会腹膜透析ガイドライン」では、「30~35㎉/㎏標準体重/日を目安にする」となった。さて、どうしよう。いずれの基準であっても、30㎉/㎏標準体重/日が含まれているので、よしとするか。しかし、個別にエネルギー量を設定するのが原則なのに、1つの値しか書いていない選択肢を正解にできるのか疑問である。ちなみに、腹膜からのブドウ糖吸収エネルギー量は、使用透析液濃度、総使用液量、貯留時間、腹膜機能などの影響を受ける。1.5%ブドウ糖濃度液2ℓ、4時間貯留では約70 ㎉が、2.5%ブドウ糖濃度液2ℓ、4時間貯留では約120 ㎉が、4.25%ブドウ糖濃度液2ℓ、4時間貯留では約220 ㎉が吸収される。

(2)× たんぱく質は、「慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版」では、1.1~1.3ℊ/㎏/日であったが、「2009年版日本透析医学会腹膜透析ガイドライン」では、0.9~1.2ℊ/㎏/日を目標とすることが推奨されている。この理由は、「以前は、透析液中へのたんぱく質の喪失を考慮して1.1〜1.3ℊ/㎏/dayとされていたが、わが国では栄養状態が良好に維持されている腹膜透析患者のたんぱく質摂取量は0.9ℊ/㎏/dayであること、1.2ℊ/㎏/day以上の症例はほとんどいないこと」だそうだ。

(3)× カリウムは、1998年の「腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン」では、2.0~2.5ℊ/日であったが、「慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版」では、制限せずになった。ただし、「高カリウム血症では、血液透析と同様に制限」という(注)がついている。血液透析では、2,000㎎/日以下に制限する。

(4)× 水分は、「慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版」では、尿量+除水量となっている。

(5)× カルシウムは、1998年の「腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン」では、600㎎/日となっていたが、「慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版」では、カルシウム含有薬物が内服処方される機会が多く、その場合には食事での摂取量を規定しても無意味となるために提示しないことになった。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2011-12-22 16:43 | 第25回国家試験 | Comments(0)